代謝する組織(その2)――老いない組織や、環境に影響されない組織もある
- 介護・医療・福祉の現場から
生命体には自然治癒力がありますが、
それも老いて経年劣化することは、
もはや多くの人が知るところです。
けれども、すべての生命体が
老いるわけではありません。
ベニクラゲの例や、微生物の世界では
老いや経年劣化する概念さえないのです。
そう考えると組織は、
ヒトのような生命体より
微生物に近い代謝をしているように思えます。
さて、自然治癒力というときの力とか
経年劣化というときの劣化とか、
その概念さえないという“現象”を
わたしたちは、どう理解すればよいのでしょう。
結論をいえば、アタマで理解するのでなく
現象は現象として認めてしまえばよいのです。
たとえば医療の世界では、
細菌における薬剤耐性の話題があります。
抗生物質の乱用によって細菌が耐性を獲得すると、
やがてその抗生物質が効かなくなる――これが薬剤耐性である。
といった話を耳にしたことはありませんか ?
こうした説明を受けると、わたしたちは
まず細菌があり、あとから登場した抗生物質という薬剤が
そこに作用した結果、細菌が“賢く変質した”と思いがちです。
けれども細菌は、
抗生物質という薬剤がある・ないにかかわらず、
薬剤耐性という力を内に秘め、発揮しています。
この現象は、ふとしたことで生じた遺伝子つまり耐性遺伝子が
恒常的に生まれることによって、もたらされます。
細菌が、特定の薬剤に対する耐性遺伝子を持つ現象は 事前に、
しかも細菌自身のなかで、一定の確率で「常に」起きているのです。
さて……変容する細菌と、変容する組織は
似ているのでしょうか ?
それとも、似ていないのでしょうか ?