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浜辺の診療室から

高齢者施設への私見(№1)
木を見て森を見ず

  • 介護・医療・福祉の現場から

新型コロナウイルス対応について、わたしたちがすべきことは

行政の対応を嘆いたり批判することなく、

自分たちが置かれた場を見直す行為です。

なぜなら活動環境が皆それぞれに異なっている以上、

宣言が出ても出なくても、

初動対応のまずさを問われるのは、ほかならぬ現場の当事者だからです。

 

木を見て森を見ずということばがあります。

小さいことに心を奪われることで、全体を見ない姿勢のたとえです。

新型コロナ関係で起きているさまざまな行動をみていると、

このことばが浮かんできます。

いま何を重要して、どう動かなければならないか。

何を簡素化して、何を棚上げすべきか。

優先順位をつけることで、継続して残すものと

残さないものを決める覚悟が求められるでしょう。

決められない限りは、いつまで経っても現状のままです。

 

わたしたちがいま立たされている場は、

もはやそれまでの平和な社会ではありません。

総崩れになる危険が、すぐ目の前まで迫っているという社会です。

そこで判断基準となる「指針」や「指標」は、時間的隔離と空間的隔離――。

つまり接触時間を可能な限り減らすことと、距離を保つことです。

All or noneでなく、分散させてでも総量の“削り込み”を図るべきです。

 

高齢者施設には、そこで暮らす高齢者がいます。

そして、高齢者をケアするスタッフがいます。

前者は、在宅での暮らしが限界だからこそ入所されたのであり、

後者は、テレワーク・在宅勤務という方法がとれません。

“三密”は控えるようにと再三いわれても、

歩行、食事、排せつなどあらゆる介助から、

密を取り除いてゼロにすることは不可能な環境にわたしたちはいます。

 

たしかに難題です。

ついついやりがちなのは、木を見て森を見ずの行為です。

施設では、新型コロナの蔓延予防策として、

消毒や掃除、その都度の手洗いなどに要する時間が割り込んできています。

それまでしてこなかった新たな業務が加わってきたということです。

これまでしてきたすべてをそのまま維持しようとすれば、

業務の総量は13になり、15と膨れ上がっていくでしょう。

もともと10あった仕事に新たな3が、しかも必須の3が加わってきたなら、

どこかで3を引き算することを考えてください。

難敵から本気で身を守りたいなら、10の維持はもちろん、

9や8にする努力があってもいいのです。

 

情報化時代ですから、難敵の断片が日々伝わってきます。

しかし眼前の木ばかり見ていると、迫ってくる難敵の全体像が見えてきません。

情報を取り入れることもせず、きちんと考えることもせず、

これまでのように抱え込んでいれば、

新型コロナによる深刻な犠牲者が、連鎖反応的に生まれるはずです。

目次

認知症

高齢者の終末期

老いるということ

新型コロナウイルス感染症

心療内科

介護・医療・福祉の現場から

生をめぐる雑文

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