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浜辺の診療室から

感染防御にみられる自然免疫と獲得免疫
2021年2月

  • 新型コロナウイルス感染症

ワクチンを接種することで、ウイルス(抗原)に対する抗体が生まれます。

生まれた抗体が、新たな感染をブロックしてくれると期待されますが、

感染防御は抗体主体のシステム(獲得免疫)だけでは不十分のようです。

新型コロナを防止するには、自然免疫+獲得免疫の総和がものをいうと説く

宮坂昌之先生(大阪大)の意見を紹介する。

 

われわれの免疫の仕組みは自然免疫と獲得免疫の二段構え。場合によっては、自然免疫だけでもウイルスを撃退できる。その場合には抗体は関与していない。

新型コロナウイルスに対する免疫は、抗体だけではなく、自然免疫と獲得免疫をあわせた総合力によるもの。免疫では抗体だけが重要なのではない。自然免疫と獲得免疫が働くイメージを下図に示す。

抗体には善玉、悪玉、役なしの3種類があるため、単に抗体の量や陽性率を測定しても意味がない。抗体を調べるのであれば、中和抗体(=善玉抗体)がどのくらいできていたかを調べるべき。

要するに抗体は、量ではなくて質が大事ということ。

新型コロナウイルスの感染では、たとえ抗体ができても全員に中和抗体が十分にできるわけではなく、しかもその持続が数ヵ月ぐらいと想定される。ということは、半年経つと抗体は大きく減っていることが予想されるから、抗体陽性率を指標にして集団免疫の判定をすることは適切ではない。社会の抗体陽性率が感染者の数を表すとは必ずしも限らない。

 

 

アメリカCNNニュース(2021年2月2日)によれば、

米マウントサイナイ医科大学研究チームはmRNA(メッセンジャーRNA)ベースのワクチンの接種を受けた109人について、接種後の抗体価や副反応を調べた結果が報告されました。

感染歴なしのグループは、1回目の接種から9~12日後の抗体価が比較的低かったのに対し、感染歴のあるグループは数日のうちに最大で10~20倍の抗体価を示したとありました。

 

けれどもこの抗体の“中身”が問われるというのが宮坂先生の指摘です。

中和抗体(善玉抗体)がどれほどあり、

「役なし抗体」がどれほどあるかは分析されていないからです。

 

 

気道(口~ノド~気管~気管支~肺)に付着したウイルスが

じっと隠れながら増殖して血中に出てきたとき、

その状態を免疫系監視防衛システムがキャッチすると、

自然免疫系が動き出します。

具体的には、自分を構成している成分とは異なる要素を発見すると、

ダイレクトに溶かし込んだり、掃除担当細胞が食べ込んで処理することで、

外来要素が体内に留まれないよう働くのが自然免疫系です。

 

自然免疫系は太古の微生物を起源として植物、無脊椎動物、

そしてわたしたち脊椎動物に共通する監視防衛システムなのです。

目次

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