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浜辺の診療室から

均等には進まない感染症――集団免疫成立は難しい
2021年2月

  • 新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症はどれくらい感染しやすいのか。

感染したとして、体内で誘導される免疫反応は既存の反応と同じなのか、違うのか。

古典的な常識にとらわれない最新免疫学の知見について、

大阪大の宮坂昌之先生は、以下のように総括しています。

 

 

集団免疫に関して、古い考えと新しい考えを対比することにより、頭の中を整理したい。

第一点目。

古い考えでは、集団免疫の主役は「抗体」であるとされてきたが、新しい考えでは、自然免疫と獲得免疫の力をあわせたものがコロナに対する抵抗力を表わすとみる。

 

第二点目。

古い考えでは、社会は免疫学的に均一な人から成り立っているので一定以上のウイルス曝露にあうと必ず一定の割合の人が感染すると解釈しているが、新しい考え方では、社会を形成する人は均一とは限らないとする。ヒトには免疫学的に強い人と弱い人がいて、弱い人から感染するから、感染が進むにつれて強い人が残るので、感染は一様には進まない

 

第三点目。

古い考え方では、一度免疫ができるとそれが「一定期間持続してやがて集団免疫が形成」されるとしているが、新しい考え方では、個体レベルで免疫ができてもそれが一定期間持続するとは限らないとみる。つまり抗体陽性率によって集団免疫形成の有無を判定することは難しいということ。とりわけ新型コロナウイルスの場合には、古い集団免疫の考え方はあてはまらない。自然の経緯に任せての感染だけを考えると、集団免疫を得ることが難しいのではないか。

 

ただ日本人の重症化率・致死率が低いことは事実。これは(国民相互の自助努力により)感染の頻度が低いことが主な理由。「新型コロナ恐るるに足らず」と早合点して、3密回避、マスク着用、頻繁な換気などの対策を軽視するのは大変危険。いかに罹患しないか、ウイルスを拾わないかを真剣に考え、行動様式を愚直に守る姿勢が大事。

目次

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