時間が経ったところでの包括的評価が大事
2021年2月
- 新型コロナウイルス感染症
自然科学や医療の分野では、怪我の功名だったり
瓢箪から駒が出ることがあります――。
じつはゼンソクで使われる吸入ステロイドも好例です。
ステロイドと聞いて、即座にノーという人は、今もいらっしゃいます。
どうして? と訊くと、ステロイドは強い薬だからといった答えが返ってきます。
たしかに重いゼンソク発作を止めるときにはステロイドを使います。
ですから吸入ステロイドは
ゼンソク発作時に効くものと思われていました。
……一般の人がそう思っていた?
いやいや、そうではありません。
研究開発に携わった人たちが、です。
商品説明をした当時の製薬会社MRによれば、
吸入ステロイドは、ゼンソク発作に効果があると
期待されて商品化されたようです。
いまの位置づけは、発作を起きにくくするための予防薬。
注射や内服によるステロイド長期連用にみられるリスクは
吸入ステロイドにありません。
昭和の時代、決して珍しくなかったゼンソク死は、
この吸入剤の普及によって大きく減りましたた。
黎明期の思い込みや肩透かしは、あっていいと思います。
大事なのは、事実を額面どおりに受け止め、
それがどういったメカニズムにより導かれたかを類推し、
きちんと検証したあと、現象をストーリー化することです。
ストーリー化できない結果には、ウソがたくさん潜んでいます。
納得できない結果を、“有意義” な結論へと強引に導こうとすれば、歪曲が生まれます。
自然科学なら捏造につながるし、医療の現場なら誤診につながります。
けれども事実を公平に検証したあと現れたストーリーは、
これまでの思い込みや浅学を覆すほどに斬新で、画期的だったりします。
たとえばパルスオキシメータのように。
あるいは吸入ステロイドのように。
導入された新手法は、目的どおりの結果を残せないかもしれません。
けれどもそこから、有益な副産物が生まれることがあります。
新型コロナワクチンは、やりっぱなしにすることなく
時間が経ったところでの包括的評価が大事になってきます。
きちんと見守っていこうと思います。