心地よく眠るために
若いときと比べて睡眠の質が落ちているように感じます。朝起きても、ぐっすり寝たときの爽快感が得られません。健康体を保つには、睡眠をしっかりとることが大事とテレビで見ました。
睡眠についてのお話を希望します。
企業戦士が もてはやされた時代
「24時間戦えますか」というCMがありました。発売元は大手製薬メーカーで、1980年代後半から1990年代初頭にかけて流れた栄養ドリンクのCMでした。“疲れたときはこのドリンクを飲んで、24時間戦おう” というメッセージコピーはその後、「働きすぎ社会の象徴」、「人間性の軽視」など不名誉なレッテルを貼られて消えていきました。
また当時は、「24時間のうち8時間は寝ているのだから、わたしたちは人生の1/3をムダにしている」と語った人もいました。このフレーズ自体は昭和〜バブル期の「働き方礼賛」的文脈でもしばしば使われ、ビジネス書や経営者の講話などで、松下幸之助や本田宗一郎、稲盛和夫などの「成功哲学」と並べて紹介されたこともありました。
何がいいたいかというと、「人間というものは寝ずに働ける、寝なくても生きていける、睡眠は削げるものなら削いだほうが効率よく働ける」といったバイアスが、バブル期つまり今から30~40年ほど前には大きく働いていた点です。一部の経営成功者の話のみならず、身体メカニズムに詳しいはずの製薬メーカーがCMに取り上げたくらいですから、当時は巷を席巻した行動様式だったのでしょう。
もっともあの時代を知っている者としては、仕事も遊びも闊達に行い、成果主義に縛られることなく業績が伸び、充実したビジネスを展開していた人たちが数多くいました。過労死は許容できませんが裁量性を取り上げられ、閉塞感漂うなかで いくつもの過労死が起きていたことは事実です。理不尽な要求でがんじがらめにされ、やってもやっても解決しない仕事の重圧に身もこころもぼろぼろになり行き場を失った果てに、自ら命を絶っていったのです。失われた30年が始まってまもなくの1998年、自殺者は3万人を越えましたが、その多くは中間管理職を含めた中高年の男性労働者でした。
話を戻しましょう。ともあれ寝る間を惜しんで働け、睡眠時間を削ってでも勉学せよといった姿勢は、昭和の時代にじわじわと広まり、当たり前のように信じられるまでになったわけですが、その姿勢に疑問符をつけたのは人工知能・コンピュータでした。
その人工知能の歴史は1950~1970年代から始まります。1980年代は性能の伸び悩みやコスト面から“AI冬の時代” と呼ばれていました。それが2010年代になってGoogle、Facebook、Amazon などがAI技術を急速に導入したあたりから風向きが変わりました。OpenAIが ChatGPT を2022年に公開したところ、一般ユーザーが自然言語でAIと会話できるようになり、わずか数か月で全世界に急速拡大しました。そして2023~2024年には、「生成AI(Generative AI)」が社会的ブームになりました。
脳は睡眠を要求する
人工知能やAIは近年になって、加速度を増しながら社会のなかに入ってきたといえます。この流れは当初、誰かが意図して始めたにせよ、国境を越えて全世界に広まったのは極めて自然なことでした。なぜならビジネスや事業は一部の人しか関係しない世界ですが、好奇心や探求心はほぼすべての人に備わっている“芯” だったからです。
人工知能の産物が社会に組み込まれたことで、人工知能と人間の知能の差異が浮き彫りになってきました。なかでも以下の2点は、よく強調されます。
・総合力の点からみると、人間の脳は電脳より秀逸であることが あらためて明確になった。
・人工知能は電源さえ確保されていれば24時間稼働するが、人間の脳は睡眠を要求する。
人間らしい営みをするために脳は大事であり、その脳を動かすために睡眠は欠かせない要素です。
にもかかわらず、睡眠に対して無頓着だったり無関心な人が少なくないのは、睡眠が果たしている役割が周知されていないからでしょう。
そこで日本において睡眠の第一人者である柳沢正史先生のコラムを参考に、自然な眠りにつくための5カ条を紹介し、明らかになってきた現代の睡眠学をお伝えしようと思います。
自然な眠りに入るための 5か条
1.布団に入るタイミングは、眠くなってからがよい
布団には、眠くなってから入りましょう。
眠くないのに布団に入り、眠れないまま布団にとどまっていると「眠らなきゃ」という思いが強くなってきます。とくに明日、大事な仕事が入っていたり、朝からきちんと稼働する予定があったりすると緊張から眠れなくなります。眠れないまま1時間、2時間が過ぎてしまうと「今から眠れたとしても4,5時間しか眠れない」といった焦りが生じて、ますます眠れなくなります。
眠りにつけない限り、脳の休息は望めません。脳に疲労がたまった状態で、明日の仕事に向かうことになった経験があると、「早く寝なくっちゃ、しっかり眠らなくっちゃ」と余計に焦り悪循環に陥ります。こうした日々が続くと、単なる不眠から体調不良状態に傾いていくため、注意が必要です。
また中途覚醒といって、夜に目が覚めてしまう状態も、十分な睡眠が得られなくなります。夜中に目が覚めたら、まずは布団の中でゆっくりと深呼吸をするなどして、静かに眠ろうとしてみるとよいでしょう。それでも一定時間眠れないときは、思い切って布団から出てベランダで夜空を眺めるなど、気分転換してみてください。そして再度眠くなったら、布団に入るようにしましょう。
眠くなってから布団に入ることを習慣にすると、「条件付け」ができてきます。そうなれば、布団に入ると自然に眠りに落ちる状態になっていきます。
ちなみに、22:00〜0:00までが睡眠にもっともよい時間帯という説がありますが、これはすべての人に当てはまるものではありません。なぜなら、適切な睡眠の時間帯は、人それぞれに異なるからです。22:00になっても眠くならないのであれば、無理して22:00前に布団に入る必要はありません。どの時間帯がベストかは、試行錯誤を積むことで得られます。たとえば22:00でダメなら23:00にする、23:00でもダメなら思い切って21:30にするといった方法を試してみてください。
2.眠るためのお酒は避ける
眠ることを目的として、アルコールを飲むのはおススメできません。日本には寝酒やナイトキャップ(夜にちょっとひっかける)という言葉があり、世界でも「眠るためにお酒を飲む」人が多い国がニッポンです。
アルコールにはたしかに催眠作用がありますから、寝つきがよくなることはあります。
しかしアルコールは深い睡眠を阻害したり、覚醒しやすくなってしまうといった悪影響もあります。
また、寝酒を繰り返していると、唯一のメリットであった催眠作用も次第に弱くなっていきます。
そのうち、より多くのアルコールを飲まないと眠れなくなってしまうと、睡眠にも健康にも悪い影響が出てきます。
就寝時にほとんどお酒が抜けているような飲み方が、睡眠への影響を軽減するポイントです。「自分もお酒が好きですが、飲むのは夕食のときくらいまでにしています」と、柳沢先生もおっしゃっています。どうしても寝つきが悪いのであれば、アルコールではなく睡眠薬を頼ったほうがベターです。
睡眠薬はイヤだ、と睡眠薬や睡眠導入剤を忌避する人も多くいますが、実はアルコールよりも効果的で安全です。
3.寝室は暗く、静かな環境にしよう
寝室は、明るさ・音・温度を意識して環境を整えましょう。
眠りたいときは、眠る環境を真っ暗にするのが理想です。遮光カーテンや雨戸などを使い、外からの光を遮断しましょう。
また睡眠中は目を閉じて眠るので、音からの刺激に敏感になっています。音や、人の話し声にはとくに敏感で、覚醒作用が働きます。睡眠用BGMとか自律神経にやさしい音楽で眠れるという人もいらっしゃいますが、原則からすれば音は脳を刺激するため眠りを妨害すると思ってください。もし音楽を聞きながら眠りたいなら、一定時間で音が消えるタイマーを使うなどの工夫がよいでしょう。
快適に眠れる温度を朝まで保つことも重要です。地球温暖化によって、猛暑の真夏日や極寒の真冬日がニッポンでもみられるようになりました。エアコンが必須な時期は、朝までつけっぱなしにすることが推奨されています。よく「夏場にクーラーのかけすぎはよくない」といって、タイマーをかけている方がいますが、タイマーが切れたタイミングで寝苦しくて目が覚めてしまう場合が多くあるのです。エアコンはタイマーでなくつけっぱなしがよいのです。覚えていてください。
4.夢を見るのはよくないと思わないこと
「夢を見るので、睡眠が取れていないのでは?」と思っている人がいます。
しかし夢を見ることと、睡眠の質が悪いことはイコールではありません。
あとでレム睡眠とノンレム睡眠の話がでてきますが、夢は レム睡眠に入っているときに訪れます。極端に睡眠時間が短くないのであれば、夢をみるレム睡眠は確保されているはずです。つまり夢を見ていないという人は、夢を見たことを覚えていないだけの話です。もしどうしても夢の内容を覚えていたいというなら、枕元にメモ用紙を置き、目覚めたときに夢の内容を記録しておくとよいでしょう。
ともあれ夢を見るというのは、レム睡眠が確保されている証拠です。安心してください。
夢は現実世界で起こり得ることの予行演習をしていて、ストレス耐性を高めているという学説があります。この学説は2000年代以降に提唱されたもので、2000年にフィンランドの神経科学者アンティ・レヴォンスオ(Antti Revonsuo)が発表した「脅威シミュレーション理論(Threat Simulation Theory)」が代表です。しっかりと夢を見る人の方が、PTSDやトラウマのような状態からの回復が早いという研究結果が報告されていました。
夢を見ることで「睡眠の質が悪いかも」と悩んでいるのであれば、、夢を見たら「ストレス耐性を高めてくれていたんだ」くらいに楽観視してもよいのです。
5.自分に適した睡眠時間を確保しよう
レム睡眠は、睡眠の後半に多く出てくる睡眠で、とても大事な睡眠です。
ですからレム睡眠を確保するには、睡眠時間そのものを十分に確保していたほうが有利です。
レム睡眠はこれまで、夢を見るほどに脳が活動しているのだから、昏々と眠る脳でなく浅い睡眠をしているのだろうといわれてきました。しかしレム睡眠は、記憶の整理や忘却、運動や作業に関する記憶を定着させる上で、とても重要な睡眠であることがわかってきました。
また近年の研究では、レム睡眠中は脳の血流量が増えることも指摘されています。レム睡眠中には、脳の中で物質交換が盛んに行われ、老廃物の除去が行われていることも明らかになりました。「レム睡眠がしっかり取れていないと、認知症のリスクが高まる」「レム睡眠が少ないほど、余命が短くなる傾向がある」といった論文も報告されています。
それなら寝ているときのほうが、起きているときより、脳の活動量が多いのでしょうか?
答えはイエスです。とくにレム睡眠(REM睡眠)のときは、脳の活動が非常に活発で、覚醒時と同じかそれ以上のレベルになることが知られています。
眠りのメカニズム
睡眠と覚醒のリズム
わたしたちは毎日ほぼ同じ時刻に眠りに入り、7~8時間ほどで自然に目覚めます。
また徹夜をしていると眠気が徐々に強まり、明け方になると耐え難い眠気を感ずるわけですが、不思議なことに午後になると眠気がいったん軽くなることがあります。決まった時刻に眠気が出現し、また醒めてゆく睡眠(眠気)のリズムは、どのように形作られるのでしょうか。
じつは、規則正しい睡眠リズムは、日中の疲労蓄積による「睡眠欲求」と、体内時計に指示された「覚醒力」のバランスによって生み出されます。健やかな睡眠を維持するためには、夜間にも自律神経やホルモンなど、様々な生体機能が総動員されています。
さて睡眠には、サイクルがあります。大脳を休める「ノンレム睡眠」と、そのあと夢を見る「レム睡眠」が約90分のセットになっています。そのセットが繰り返され、睡眠は徐々に浅くなって朝の覚醒を迎えます。
睡眠をかたちづくる2つのメカニズム
ヒトの睡眠(眠気)は、大きくふたつのシステムによって形作られています。
下の図に、眠りのメカニズムを示しました。

第一のシステムは、覚醒中の疲労蓄積による睡眠欲求(青い棒ライン)の増加です。睡眠欲求は目覚めている時間帯が長いほど強くなります。徹夜などで長時間覚醒していると、普段寝つきが悪い人でもすぐに入眠し、深い眠りが出現することが知られています。いったん眠りに入ると睡眠欲求は徐々に減少し、その人にとって十分な睡眠が確保されると、睡眠欲求は急速に消失して私たちは覚醒します。
第二のメカニズムは、覚醒力(赤い棒ライン)の減少です。
覚醒力は体内時計から発信されるシグナルの指示で、交感神経の活性化、覚醒作用のあるホルモンの分泌、深部体温(脳温)の上昇などによってもたらされます。
覚醒力は日中を通じて増大し、徐々に強まる睡眠欲求に打ち勝ってヒトを目覚めさせます。普段の就床時刻の数時間前に覚醒力は最も強くなり、その後、メラトニンが分泌される頃(就床時刻の1~2時間前)になると、覚醒力は急速に低下します。このため、私たちは夕食後に団欒するなどすっきり目覚めていても、就床時刻あたりで急に眠気を感じるようになります。もし覚醒力がなければ、徐々に強まる睡眠欲求のため、日中の後半は眠気との戦いで質の高い社会生活は営めなくなるでしょう。
生体機能が総動員されることで、睡眠は維持される
睡眠と覚醒を調節するために、生体機能は総動員体制になっています。
これにより結果的に体内時計が生まれます(下の図)。あ

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図の赤いラインは、脳の温度を示しています。活動する日中には脳の温度は高く保たれ、夜間は体から熱を逃がして脳は冷えていきます(熱放散)。そのため就床前の眠気が強くなる時間帯は、脳が急速に冷え始める時間と一致しています。
また同じ頃、体内時計ホルモンであるメラトニン(青いライン)が分泌を始め、入眠を促します。これら以外にも様々な生体機能が協調しあいながら、ハーモニーを奏でるように質の高い眠りに移行するよう働いています。
未明から朝方になると、覚醒作用を持つ副腎皮質ホルモン(緑のライン)の分泌が急激に高まります。それを受けて、脳の温度は徐々に高くなっていきます。生体機能のこのような時間的変動により、健全な体内時計が生み出されるわけです。
メラトニンは睡眠を促進する作用を持ちますが、明るい光の下では分泌が停止します。つまり静かに横になって熱放散を促し、メラトニン分泌を妨げないように消灯した暗い部屋で休むことは、睡眠をサポートする生理機能の力を最大限に引き出す上でも大事なことなのです。
レム睡眠と、ノンレム睡眠
睡眠は決して「脳全体が一様に休んでいる状態」ではありません。眠っている間にも脳活動は様々に変化します。
ヒトの睡眠はノンレム睡眠(non-REM sleep)とレム睡眠(REM sleep)という質的に異なるふたつの睡眠状態で構成されています。レム睡眠は、眠っているときに眼球が素早く動く(英語でRapid Eye Movement)ことから名づけられました。
《ノンレム睡眠》
睡眠は深いノンレム睡眠から始まり、睡眠欲求が低下する朝方に向けて、徐々に浅いノンレム睡眠が増えていきます。ノンレム睡眠+レム睡眠が約90分サイクルで訪れ、サイクルの終わりのほうでレム睡眠がやってきます。
ノンレム睡眠は睡眠の深さにより、入眠期(N1)、中間期(N2)、徐派睡眠期(N3)の3段階に分かれます。眠り始めが入眠期で、そのあと眠りの大半を占める中間期に移行し、そのあと徐派睡眠期が訪れます。この徐派睡眠期が最も深い眠りで、脳波は遅くなり(徐派)、成長ホルモンの分泌や身体の修復が行われる時間帯です。記憶の定着や免疫機能の強化、身体の回復などに重要とされるのが、ノンレム睡眠の最後に訪れる徐派睡眠期です。つまりノンレム睡眠は単なる「休息」ではなく、脳にとって非常に重要な「メンテナンスと整理の時間」になっています。

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深いノンレム睡眠は、大脳皮質の発達した高等生物で多く出現します。昼間に酷使した大脳皮質を睡眠前半で集中的に冷却し、休養を取らせます。
このように、浅い眠りでありながら脳が非常に活発に働いているのがレム睡眠の特徴です。
眠りの質を語る際には、ノンレム睡眠による身体の回復と、レム睡眠による脳の回復・整理の両方が重要であり、バランスの取れた睡眠サイクルが健康維持に不可欠です。
高齢者の睡眠特性 短く浅くなる
睡眠は、年を取るにつれ浅くなっていきます。深い睡眠(ノンレム睡眠の第3段階)とレム睡眠は、子供より成人が、また成人より高齢者になればなるほど減っていっていきます。また高齢者は睡眠が浅いために、夜間の中途覚醒や早朝覚醒が起きやすくなります。
年を取るにつれ睡眠は浅くなるだけでなく、時間も短くなっていきます。下の図をみてみましょう。睡眠時間は生まれたときが最長で、加齢とともに短くなり、70歳にもなると平均睡眠時間は6時間を切るようになります。

高齢者が早寝早起きになるのは、睡眠が浅くなり睡眠時間も短くなることが関係しています。
つまり生活リズムが前倒しになっていくのですから、それ自体は自然なことです。
生活にメリハリがあったり、自然な睡眠に恵まれている高齢者も少なくありません。そのような方に話を聞くと、日ごろから注意している点がいくつはあるようです。
少しでも睡眠の質を高めたい人は、以下を参考にしてみてください。
1.昼間の仮眠をしてみる。昼食後がおススメ。ただし30分以内を守る。
2.仮眠は、床に入る9時間前までに済ます。たとえば午後11時に寝たいのであれば、午後2時以降に仮眠することはしない。
3.寝酒はやめる。アルコールには利尿作用があるため、夜間のトイレが増える。また睡眠自体も浅くなるため。
4.カフェインを含んだ飲料は、夕食以降飲まない。コーヒーとお茶の飲み方を見直してみる。
5.塩分は控えめにする。味の濃いものを食べると、それを薄めようと水分の摂取量が増えます。水分を取らないとノドが乾くので自然と水を飲みたくなる。すると排尿量が増えるため、夜間トイレに行かざるを得なくなる。
「若いときより睡眠時間が減った」とか「知人は7時間眠れているというのに、わたしは6時間眠れればよいほう」など、若い頃の自分や他人と比較する行為は、あまり感心しません。
睡眠時間は人それぞれですから、昼間に眠くて仕方がないなど睡魔に襲われることがなければよしとする、といった太っ腹な気構えが大事といえます。
寝不足と睡眠導入剤 どちらが悪い?
眠剤を利用しないで寝不足になるのと、眠るために眠剤を服用するのでは、どちらが体によくないのでしょう? 残念ですが、一概に言えないというのが答えになります。
切り口によって答えは変わってくるというわけです。以下、順番にみていきます。
寝不足は 脳によくない
眠剤のデメリット
次に、睡眠導入剤(睡眠薬)の弊害の有無について考えてみます。
眠剤が脳に与える影響は、種類や使用方法によって異なります。適切に使えば有益な場合もありますが、長期使用や乱用は脳に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
長期的な影響(数ヶ月〜数年の視点)
| 眠剤を継続使用 | 慢性的な寝不足 | |
| 脳への影響 | 記憶力・認知機能低下(特にBZ系) | 認知症リスク増加、脳の老化促進 |
| 依存リスク | 耐性がつき、薬なしでは眠れなくなる | 生活習慣が乱れ、不眠が慢性化 |
| 精神面 | 長期使用で抑うつ・不安が悪化することも | うつ病・不安障害のリスク上昇 |
| 健康リスク | 服用の副作用(転倒・筋力低下など) | 高血圧、糖尿病、心疾患リスク増加 |
結論:どちらが心身によくないか?
- 寝不足は、たしかに危険!(仕事や運転への影響が大きい)
- 長期的には、眠剤の惰性的な服用も無視できない!(脳の老化や依存のリスクが高まる、特にベンゾジアゼピン系は認知症リスクや依存リスクが高いため、長期使用は避けたほうがよい)
👉 どうしても眠れないときは、短期間だけ眠剤を使うのはOK。
👉 でも、長期的に頼るのはNG。 根本的に睡眠環境を改善することが大切。
おすすめの対策
- 生活習慣の改善(寝る前のスマホやテレビ、読書はやめる、カフェインを控える)
- 寝る前はクールダウン期と自覚しよう(眠りに入る前は、交感神経(戦闘系)から副交感神経(やすらぎ系)に移行しようという時期だから)
- 依存性の低い薬を選ぶ(メラトニン系やオレキシン受容体拮抗薬など)
- 医師と相談しながら、徐々に減薬する
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ベンゾジアゼピン系(BZ系)
先発品名)ハルシオン、レンドルミン、リスミーなど
- メリット:即効性があり、不安を和らげて眠りにつきやすくする
- デメリット:長期使用で依存・耐性がつきやすく、離脱症状(不眠・不安・めまい)が出ることも
- 脳への影響:記憶力低下、認知症リスク上昇の可能性が指摘されている
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非ベンゾジアゼピン系(Z系)
先発品名)マイスリー、アモバン、ルネスタなど
- メリット:BZ系より依存性は低い
- デメリット:長期使用で耐性がつくことがある
- 脳への影響:BZ系ほどではないが、記憶障害の報告あり
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メラトニン受容体作動薬
先発品名)ロゼレム
- メリット:自然な眠気を誘発し、依存性がほぼない
- デメリット:効果が穏やかで即効性はない 効かないとする声も少なくない
- 脳への影響:認知機能への影響は少ない
- 服用するタイミング:就寝の30分前に服用するのが望ましい。理由は服用後、45~1時間で血中濃度がピークになるため。この点が既存の睡眠導入剤や睡眠剤と異なる。
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オレキシン受容体拮抗薬
先発品名)ベルソムラ、デエビゴ
- メリット:自然な睡眠リズムを促し、依存性が少ない
- デメリット:日中の眠気が残る場合がある 効果が少ない、悪夢を見るといった声も少なくない
- 脳への影響:比較的安全とされる
- 服用するタイミング:「就寝直前」よりも、就床の約30分〜1時間前に服用するのが望ましい。理由は服用後、1時間あまりで血中濃度がピークになるため。この点が既存の睡眠導入剤や睡眠剤と異なる。
参考資料)
「睡眠の謎に挑む」「睡眠の質を上げるには?」「日本人の睡眠不足の原因」など(YouTube資料 柳沢正史)
「睡眠のメカニズム」(三島 和夫 秋田大精神科教授 2023年01月23日 e-ヘルスネット)





