• 0465-64-1600

健康長寿サロン

正常な排便のメカニズムについて

お題)

そもそも排便の仕組みってどうなっているの? とのリクエストがありました。

 

便はどうやって直腸まで移動するか?

結腸で水分を吸収されて固形になった便は、すぐに排泄されるわけではなく、結腸の最後尾に位置するS状結腸でしばらく待機します。

排便のための刺激になるのは、食事、便量の増加などです。特に食事は大きな刺激になり、横行結腸からS状結腸にかけて胃、結腸反射による強い蠕動運動が生じます。これを総蠕動といい、1日に1〜2回起きます。この蠕動に便の重さによる刺激が加わり、便は直腸に向けて押し出されます。

 

便意を我慢できるのは、なぜ?

肛門周辺には内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)と外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)があります。内肛門括約筋は平滑筋で不随意筋(意のままにならない筋肉)です。

それに対して外肛門括約筋は、横紋筋で随意筋(意のままになる)です。排便中枢を通じて副交感神経が刺激されると、内肛門括約筋は反射的に弛緩しますが、外肛門括約筋は排便動作をとらない限り弛緩しません。

つまり、意識的に外肛門括約筋を緊張させれば、便意を一時的に我慢できるわけです。

 

排便のメカニズム

便の移動によって直腸内圧が40~50mmHg以上になると、刺激が直腸壁の骨盤神経から仙髄の排便中枢に伝わり、視床下部を経て大脳皮質に伝達され、便意を意識することになります。

こうした刺激は、直腸内の内容物より上方の緊張や運動を高め、それより下方の緊張や運動を低下させます。この絞り出すような運動により、便は次第に肛門に向けて送り出されていきます。

 

一方、排便中枢に刺激が達すると副交感神経が刺激され、反射的に直腸筋が収縮して内肛門括約筋が弛緩します。ここでも、内容物を絞り出すような運動が起こります。

なお随意筋からなる外肛門括約筋は意識的に排便を調節できます。

ですから意識的に排便をしようとして、排便動作をとって努責することにより、腹腔内圧と直腸内圧の上昇、直腸筋の収縮、横隔膜の押し上げなどの運動が協調して起こり、便が肛門から排泄されます。

 

いきむ時は大きく息を吸い、口を閉じて息を止めます。努責時にかかる直腸内圧は100~200mmHgです。努責を開始すると血圧が急上昇し、体循環、脳循環に影響を及ぼしますから、日ごろから血圧が高い人は要注意です。緩下剤による便の軟化を勧めます。

大腸内の細菌はどんな働きをしているか?

体内の粘膜にはたくさんの微生物が生息しています。これらの微生物の集合体を細菌叢〔さいきんそう〕(フローラ)といいます。腸内にも細菌叢があり、消化を補助する役割を果たしています。細菌叢はビタミンK、B12、葉酸などのビタミンを合成したり、外から侵入した有害な細菌から体を防御する役目があります。ビタミン類は摂取するのみでなく、体内で生み出されてもいるわけです。新生児期にはビフィズス菌や乳酸桿菌など、体にとって有益な細菌が優勢ですが、年齢を重ねるにつれ、有害物質を生成するウェルシュ菌が増えてきます。便の10〜30%にはこうした腸内細菌が含まれており、最も多いのが大腸菌です。大腸菌は便中の食事カスを分解する働きを持っています。

 

便秘はなぜ起きるか?

便秘は、大腸の中で内容物の移動に時間がかかり、水分が過剰に吸収されて便が硬くなったり、排便そのものが困難になることによって起こります。

便秘は機能性便秘と器質性便秘に分けられます。機能性便秘には、一過性便秘(単純性便秘)と習慣性便秘(慢性便秘、常習性便秘)があります。ほとんどは習慣性便秘で、大腸の機能障害で起こる大腸性便秘と、直腸の排便機能の障害で起こる直腸性便秘に分けることができます。

 

大腸性便秘は、習慣性便秘の大半を占めます。大腸壁の緊張や、大腸の蠕動運動が低下すると、内容物の通過が遅れて便秘になります。運動不足や長期臥床などで腸管への機械的刺激が不足したり、大腸の粘膜の感受性が低下することで引き起こされます。

 

直腸性便秘は、直腸に便がたまって便意を感じた時に、排便を我慢することによって生じます。便意を我慢すると肛門括約筋が緊張して排便反射が抑圧され、一時的に便意が遠のきます。これを繰り返していると、直腸は次第に拡張して緊張が低下し、便が送り込まれても直腸内圧が十分に上がらず、便意を感じなくなってしまいます。

大腸そのものの障害によって起きるのが器質性便秘です。直腸癌、腸管の癒着などによって大腸に狭窄や屈曲が生じると、内容物が腸内に停滞して便秘が起こります。

 

なぜ排泄が必要なの?

私たちの体は、多数の細胞で構成されています。細胞は血液によって届けられた栄養分を燃焼させ、エネルギー源にしています。この時、細胞ですべての栄養分が完全に燃え尽きるわけではなく、いわば燃えカスや燃えさしが生じます。また、細胞が代謝をすることにより、老廃物も生じます。

これらは再び血液に戻され、全身を巡ることになります。 これらの不要物や老廃物は体にとって不必要なものですから、そのままにしておくと様々な悪影響が生じます。そのため、何らかの形で体外に排泄する必要があるのです。腎機能が低下すると不要物や老廃物の排泄がうまく行えなくなり、尿毒症(にょうどくしょう)を引き起こします。

 

MEMO)尿毒症

腎臓の排泄機能が失われ、血液中に尿素などの尿毒素がたまった状態。倦怠感、貧血、高血圧、浮腫、肺水腫などの症状が現れます。

 

 

目次

ページトップへ戻る