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健康長寿サロン

血液検査結果の読み方
(高齢者版 その2 貧血)

お題)

血液検査の結果、貧血と言われたがよくわからなかった、とのリクエストがありました。

 

高齢者の貧血にはどのようなものがあるか? その特徴などを見ていきます。

 

鉄欠乏性貧血

高齢者の貧血の中で最も多くみられるものです。表面上はありふれた鉄が少ないための貧血です。しかし、その原因のほとんどが、胃がん、大腸がん、胃潰瘍(いかいよう)など消化管からの出血であるという点で要注意です。

出血が急激に起きると、めまい、脱力感、だるさ、失神(起立性低血圧)といった症状が出やすいのですが、慢性的に経過すると、自覚症状はほとんどありません。輸血が必要なレベルでも気づかれないことがあります。

貧血の原因としては、そののか痔出血や子宮がんなどもあります。内痔核は痛みがないため知らない人も珍しくありません。

いずれも出血によって、ヘモグロビンを作る材料である鉄分が不足して貧血が発生します。

 

感染症や膠原病(こうげんびょう)による貧血

高齢者に限りませんが、腎臓、膀胱、肺、気管支、胆のうなどに感染症が存在していることがあります。

感染症が長引くと、骨髄で赤血球がうまく造られなることで貧血が生ずる場合があります。つまり、感染症になっていることが明らかになれば、その治療をすることで貧血は是正されていきます。

また膠原病と呼ばれる病気で、高齢者に多い関節リウマチでも、同じ理由で貧血が現れます。膠原病は自己免疫疾患で、自己抗体に対するアレルギー反応や炎症が慢性的に起こっています。

さらに、関節リウマチでは痛み止めを服用することで胃潰瘍が発生することがあり、消化管からの出血によって貧血を合併することがあります。痛み止めを飲むときは、十分な水とともに胃粘膜保護剤を併用してください。

 

腎障害による貧血

腎臓は尿を造るだけではなく、赤血球の産生を指示する物質を造っています。

高齢になると腎機能は低下しますが、特に腎臓病、糖尿病、高血圧などで腎機能が大きく低下すると、この物質の産生量も落ちるため貧血が現れます(腎性貧血)。腎性貧血が病的に進んだ場合は、この物質を注射によって補う方法がとられます。

 

ビタミンB12と葉酸の欠乏による貧血

ビタミンB12の不足は、摂取の不足や、摂取しても吸収が不良である場合が原因です。

胃の手術で、半分以上胃を切除したあと5年ほどたってから、胃を切除したことによるビタミンB12の吸収障害で、このタイプの貧血が出現することがあります。ビタミンB12が不足すると、骨髄で造られた幼若の赤血球が、酸素運搬のできる成熟した赤血球になれないため貧血になります。

ビタミンB12は小腸で吸収されますが、その際に胃壁から分泌される内因子という物質が必要となります。胃を切除された人や慢性的に胃炎がある人は、この内因子の不足によってビタミンB12の吸収障害がおき、結果的にB12が低下します。胃炎であれば胃の治療が必要ですが、胃切除が原因の人はビタミンB12を「注射」する必要があります。内服では効きません。

またメトホルミン(メトグルコ、グルコラン)という糖尿病薬を服用している人で、ビタミンB12の低下が報告されています。ほとんどのケースではB12は低下しないため詳細なメカニズムは不明ですが、胃炎を併発されている人(胃炎+糖尿病)で多く発症されている報告あります。この場合、メトホルミンの内服中止にて、ほぼ改善しているようです。

また一方で葉酸(ようさん ホウレンソウなどの緑黄色野菜や豆類に多く含まれる)と呼ばれる別のビタミン不足によっても、貧血になります。葉酸の不足は、ひどい偏食や、アルコール中毒などによる葉酸の摂取不足、また摂取しても吸収できない例のほか、抗けいれん剤の使用などでも起こることがあります。このため抗けいれん薬を長期服用する場合は、葉酸の補充が勧められています。脳梗塞のあとに起こる症候性てんかんで抗けいれん薬を服用している方は、一度確かめることをお勧めします。

 

その他の貧血

高齢者の貧血の中で注目すべきものとして、薬の副作用によって起きる貧血があります。特に高齢者は薬と関わる場合が多く、定期的な検査を受けるなど注意が必要でしょう。

 

 

付記)貧血があるときの症状

貧血の症状は、酸素の運び手(トラック)が少なくなったときの症状。酸素不足の状態をなんとか補おうと心臓は脈拍を多くし、それでも酸素の供給が足りないと息切れなど呼吸器の症状が出てくる。階段を登ったときや、力仕事など短時間で激しく動いたあとの動悸や息切れがそう。要するに、少ないトラックで同じ量をカバーしようとすれば、回転を良くしてフル稼働するようになる。これが心拍数増加につながる。そのほか、脳の血液供給が不足するためのめまいや耳鳴り、また骨格筋への血液供給不足の症状として脱力感やこむら返りが起きることもある。繰り返しになるが、高齢者は貧血がゆっくり進んでいたり、運動量が少ないといった理由で、症状が出にくいことがあるため注意が必要。

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