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健康長寿サロン

冬季の感染症 (いわゆる風邪、インフルエンザ、感染性胃腸炎)

お題)

毎年冬になるとインフルエンザが話題になる。大まかな話を、とのリクエストがありました。

 

  1. いわゆる風邪

急性上気道炎と呼ばれる。異なる種類に属する多数のウイルスによって引き起こされる症候群。原因はウイルス。鼻汁・鼻閉・くしゃみ・咽頭痛・咳といった様々な症状がある。

「インフルエンザ」は,上気道だけでなく,高熱や筋肉痛や関節痛などの全身症状を引き起こすという点で,いわゆる「かぜ」とは区別される。

抗菌薬(抗生物質)を投与するか、しないかを考える場合、「ウイルス感染症VS細菌感染症」という図式をイメージする医師が多い。しかし実際にウイルス感染症なのか細菌感染症なのかを、臨床的にはっきりさせることは難しい。気道感染症では、細菌感染症でも抗菌薬なしでも自然に治ることがよくある。したがって、上気道感染では「細菌感染であっても抗菌薬が必要とはいえない」病態があり,「細菌感染症=抗菌薬が必要」とはならない。

逆に言えば、上気道感染では「細菌感染であり、抗菌薬が必要な」病態があり,「細菌感染症=抗菌薬が必要」といった例もある。

この辺りの見解をめぐって、医師が抗菌剤を投与するかしないかで、今でも意見が分かれる。

 

 

  1. インフルエンザ

《インフルエンザワクチン    既存インフルエンザ 新型インフルエンザなど》

インフルエンザワクチン 2018:Aシンガポール(H1N1)スペイン/ソ連系、Aシンガポール(H3N2)、香港系 Bプーケット(山形系統)、Bメリーランド(ビクトリア系統)といった4つの株に対するワクチン(不活化されたウイルス抗原)が入っている。HやNは、ウイルス表面のタンパクで、Hは1~18まで、Nは1~11までの亜型がある。これらが既存インフルエンザ株のうち、本年度流行が予想されているもの。

Hは変異しやすく、これが終生免疫確立を拒んでいる。高齢者は1回の接種で効果あり。目的は、インフルエンザに罹らないことでなく、罹っても軽症で済む(重症化しにくい)点にある。特に高齢者ではインフルエンザに罹患したあと肺炎を併発するなどして入院し、その結果として体の動きや認知機能が弱ってしまう高齢者は珍しくない。

厚労省によれば、高齢者のワクチン効果は、発症阻止は45%、死亡阻止が80%、呼吸器系の入院を30~70%減らす。ワクチンを打った場合の効果発現は1~2週間後あたりからで、3~4ヵ月後には効果が薄れてくる。A型はヒトと動物に感染し、B型はヒトにのみ感染。C型もあるが、これは子どものみ。

 

新型インフルエンザは、鳥インフルエンザ系のH5N1型の予想のあと、H7N9型が増えている。厚労省は、今後H7N9型ワクチン製造を重視するとの情報あり(2018年6月)。

 

《予防 潜伏期 症状》

感染の方法は、「飛まつ感染」と「接触感染」が主。意外に多いのが接触感染。感染者と一緒のタオルは使わない。使い捨てペーパーがよい。「飛まつ感染」とは、咳やくしゃみによって飛び散る飛まつを吸い込むことで感染する様式。

ちなみに「飛まつ核感染」とは「空気感染」とも呼ばれ、飛まつの水分が蒸発したあとの成分を吸い込むことで感染する様式。結核やはしか(麻疹)、ノロウイルス感染症が該当する。

 

予防として大事なのは手洗い。かかっている人がマスク着用。かからないためのマスクも「有用」といった意見が一般的。

ただし自宅に戻ったら、マスクは速やかに捨てること。潜伏期は1~2日だが、最長7日との報告もある。初発症状は、発熱、悪寒、ふしぶしの痛み、頭痛が主。

 

《症状があったら、どうする?》

医療機関を受診し、インフルエンザ迅速診断キットにて感染の有無を調べてもらう。診断キットは、24時間が経たないと「陽性」か「陰性」かの判断ができない。24時間経っていないが、症状がそろっている場合は、治療薬が投与される(保険上、投与してよい)。

インフルエンザと診断された場合、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としている。発症後7日目または解熱後2日目(発症日、解熱日を0日と考える)までは第三者に感染させる可能性がある。この期間は外出などを控えて、自宅療養にて感染拡大防止にご協力を。

 

 

  1. 感染性胃腸炎

嘔気(吐き気)があったり嘔吐したりしたあと、下痢がみられる場合は、感染性胃腸炎を疑う。口から入った病原体による胃腸炎。

 

《ウイルス性胃腸炎》

感染力が強い! 冬季では、ノロウイルスが大事。

①汚染された水や食品からの感染:食品からの感染で多いのはカキなどの二枚貝による。汚染された二枚貝を生や加熱不十分なまま食べることで感染する。

②人から人への感染:感染者の嘔吐物や便を触った手やその手で触れた物を介して口に入り感染する。また嘔吐物が乾燥し、そこからウイルスが飛散しそのウイルスを吸い込み感染する場合もある(飛まつ核感染/空気感染)。

 

治療の中心は、脱水を防ぐためのこまめな水分補給、安静、整腸剤内服といった対症療法のみ。一度に水分を取ると、吐いてしまうので要注意。電解質補正も必要なので、経口補水液OS‐1などをうまく使う。これも飲みすぎに注意。

すりおろしりんごは、カリウム補充になるだけでなく、ペクチン作用で下痢に効果的。汚染物はビニール袋にきちんと入れて処理する。汚染された衣類は、漂白剤ハイターのような次亜塩素酸薬品を用いる。

 

《細菌性胃腸炎》

感染後1~4日して発症。下痢・腹痛・発熱がある。少量の排便が何度も。

通年性にみられるが、夏季に多い。サルモネラ菌(鶏肉や豚肉など)、腸炎ビブリオ(夏季の生海産魚介類)、カンピロバクター(半生の肉類など)、病原性大腸菌O157など。

 

《毒素による胃腸炎》

食後2から24時間以内に発症。 発熱は少ない。

黄色ブドウ球菌(調理人の皮膚の化膿性疾患から)、ウェルシュ菌(加熱不十分な肉やシチューなど)、ボツリヌス菌(12~36時間の潜伏期のあと、神経毒により複視、視力障害、嚥下障害、構語障害、筋力障害など重症化する例が多い)など。

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