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健康長寿サロン

レンズを引いて老化を眺め、考えてみましょう

お題)

平均寿命は毎年伸びている。幸せなことだが、不安もあるとのリクエストがありました。

 

1.老化と死亡 経年的推移からみえること

平均寿命が毎年伸びていることは、みなさんご存じのとおりです。

けれどもそれは歴史のなかでみれば最近に限ったことです。

 

下の図にある右上の四角で囲った部分が、上のグラフです。平均寿命は戦後から急速に伸びていることがわかります。

 

次に、死因別死亡率の変化をみてみます。

戦前には肺炎や結核、コレラなどの胃腸炎により死亡した方がいかに多かったかがわかります。

戦後になって上下水道の普及、公衆衛生上の改善、抗菌剤の普及やツベルクリンなどで感染症による死が減りました。

戦後増えてきた疾患は、がんのような悪性新生物、心疾患、脳血管障害、肺炎です。

 

上にある3つのグラフを重ねてみたのが、次の図です。

 

まとめてみますと、以下のようになります。

  • 戦前に死因として深刻だったのは肺炎や、コレラ・腸チフス・赤痢などの胃腸炎といった感染症。1899年~1922年までは、結核をのぞいた感染症が1位。
  • 1936年から戦後しばらくは、結核が死因第1位。
  • 第二次大戦後、栄養状態の改善、国民一律の胸部写真、BCGによる予防、治療薬の開発、抗生物質の出現により、結核など感染性疾患が激減。
  • 1957年あたりから、悪性新生物(ガン)、脳血管疾患、心臓疾患など、老化と関係した疾患(3大成人病)が増大。これに糖尿病と慢性肝疾患を加えて「生活習慣病」と呼称変更。
  • 近年の特徴としては、脳血管疾患の死亡率が低下、悪性新生物(ガン)と心疾患の死亡率が上昇していることと、高齢者では肺炎が上昇中。
  • 病気以外では、「老衰」で死ぬヒトが減った理由として、医師が直接の死因を記述するようになった点が指摘されている。
  • もっとも2009年ごろから、「老衰」は急激に上昇中。これは“老衰”による「自然死」が市民権を得てきたため。
  • 不慮の事故は、1923年(大正12年)、1995年(平成7年)、2011年(平成23年)で飛び抜けている。それぞれ関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災による。
  • 自殺者は1998年から上昇。年間3万人時代が14年ほど続いたあと、2012年から3万人以下になった。実際には11万人とも15万人ともいわれる。

 

 

2.老いのメカニズム

老いがどうして訪れるのかをまとめた高齢者施設スタッフ教育用スライドから引用してみます。

  • 正常細胞には「細胞分裂の回数券」がある。不老不死にならないよう、つまりやがては死ぬように最初からセットされている。
  • 老化して分裂しなくなった細胞:炎症性サイトカインなどの免疫物質を過剰産生している。免疫系は無方向な反応が増えかつ合目的な反応ができなくなる
  • 細胞は、プログラムされたメカニズム(能動的な死)により、自ら消えていく。これによって重大な機能低下が不連続に起こる。

(機能低下とは、正常なら10の力があったものが、3や2に落ちること)

  • 免疫系が荒廃して不良になることで、恒常性(バランスを崩しても、もとに戻ろうとする力)が保てなくなる
  • その結果、ガンが生まれる。新規に生まれるというより、これまで駆逐できていたものが、駆逐できなくなるため。
  • 脳細胞の減少と、脳神経系ネットワークの自然劣化により認知症が出てくる。

(ガンも認知症も、自然経過の予後はよくない。つまり死に結びついている。)

∴ これが老いの正体です。

 

 

3.老化と共存する 受け入れる 老いを「敵」としない

生命体の自然現象(誕生→成長→成熟・生殖→熟年→初老→晩年)の推移を受け入れましょう。

20歳のときにできていて、60歳でできなくなっていたことがあるのは、あたりまえのことです。

若い身体を維持しようと躍起にならず、これまでの生き方や考え方を振り返ることで、現在の生き方や立ち位置を理解し、これからの生き方に反映させていってください。

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