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健康長寿サロン

冬季の皮膚管理(乾皮症を中心に)

お題)

粉をふいたようになって、かゆくて眠れないのは何? とのリクエストがありました。

 

高齢になると、皮膚が乾燥した状態になります。保水機能が低下することで皮膚表面に白いフケのようなものが生じ、かさかさになってかゆみを伴います。老人性乾皮症と呼ばれ、秋から冬にかけて多い病態です。皮膚には、外部の刺激(紫外線や細菌など)から肌を守る大切な役割(これをバリア機能といいます)があるのですが、皮膚の乾燥が続いているとバリア機能が低下して、皮膚トラブルが起きやすくなります。またシミができやすかったり、真菌症になりやすくなったりもします。じつに高齢者の9割の方が、老人性乾皮症といわれています。

 

老人性乾皮症の症状

皮膚がカサカサして粉をふいたようになります。好発部位は腰まわり、太もも、すねで、衣類の摩擦などのちょっとした刺激で皮膚に赤みが出たり、かゆみが起こります。

かゆみが強いと、つい掻いてしまいますが、掻き続けることで皮膚に炎症が起きてしまい、皮脂欠乏性湿疹から貨幣状湿疹へと悪化することが少なくありません。

 

皮膚乾燥の原因

1.表皮層の変化

皮膚の表皮にある細胞は皮膚の内側部分から生まれ、およそ28日間で表皮の一番外側に到達したあと、14日ほどして垢(あか)となって剥がれます。高齢になると、このサイクルが遅くなるため、結果として表皮が薄くなります。

2.皮脂分泌の変化

皮脂は、毛穴の内部にある皮脂腺から出て、皮膚の表面に流れます。表面に流れた皮脂は、薄い膜となって広がり水分の蒸発を防ぎます。表皮層や真皮層の変化で皮膚が薄くなると、皮脂を分泌する力が弱くなります。すると、角質層は潤いを失って皮膚は乾燥しはじめます。

3.真皮層の変化(皮膚は、表層から順に、角質層、表皮層、真皮層、皮下組織の順に並んでいます)

35歳ごろから徐々に女性ホルモンの分泌が減っていきます。それにより、肌の弾力を保っている真皮層の成分が減少し、真皮層が薄くなるといったメカニズムも関係しています。

4.バリア機能の低下

乾燥してキメが粗くなった皮膚は、バリア機能が低下し外部からの刺激を受けやすくなります。紫外線、気温の変化、細菌、化学物質などの刺激を受けることで、湿疹やかゆみの症状がさらに出やすくなります。

 

皮膚乾燥を守る 入浴方法

1.熱いお湯での入浴は避ける

お風呂のお湯の適温は38℃~40℃――つまり、ちょっとぬるい感じの温度です。高齢の方は熱いお湯を好みますが、40℃を超えてしまうと角質層を傷め、保湿成分の皮脂や角質層のセラミドと呼ばれる部分が流れ出してしまい、皮膚にやさしくありません。

2.長時間の入浴を避ける、何度も入浴しない

入浴してから5分を過ぎると、皮膚の水分は減少し、15分後には入浴前より皮膚の乾燥が進んでしまいます。毎日の入浴はたしかに理想ですが、高齢になって皮膚の乾燥が気になる場合は、入浴を週に2回~3回に減らすのもよい方法です。

3.保湿成分の入った入浴剤を選ぶ

入浴剤には、保湿系タイプと発汗作用タイプがあります。用いたいのであれば、皮膚を柔らかくしっとりさせる保湿系の入浴剤を選ぶとよいでしょう。

4.弱酸性の洗浄剤を選ぶ

皮膚は弱酸性でできています。皮膚と同じ弱酸性の洗浄剤は中和効果が期待できないため、アルカリ性の製品と比べて洗浄力は落ちますが、皮膚に刺激が少ないぶん乾燥にやさしい洗浄剤となります。入浴時のボディーソープや食器洗いの洗剤は、弱酸性のものが推奨されます。

 

かゆみ対策と治療

1.肌着を木綿(100%コットン)の素材にする

皮膚に直接触れる肌着は、木綿(コットン)の素材を選ぶとよいです。綿100%の素材は、肌に触れると少しかたく感じますが、物理的/化学的刺激が少なくかゆみを抑えることができます。流行りの化繊(ヒート〇〇など)は便利ですが、皮膚が弱い熟年層~老年層にはお勧めできません。オールコットンにすることで、皮膚の荒れやかゆみからの解放を期待しましょう。

2.ストレスを避ける

乾燥した皮膚のストレスは、紫外線などの外的要素と、精神的な内的要素に分かれます。

外的要素には、過度な暖房による空調や紫外線などがあります。いずれも直接皮膚に影響を与えます。内的要素には、精神的ストレスとして睡眠不足、また対人ストレスや過労などがあります。いずれも代謝を悪化させ、皮膚への影響が出やすくなります。ストレスの解消は、健康な皮膚を維持するための第一歩です。

3.食事で皮膚の代謝をよくする

ビタミンをコンスタントに摂取することが大切です。

ビタミンには皮膚の代謝を促進し、潤いを保つ働きがあります。とくにビタミンAとCは、効果が高いため積極的に摂っていきましょう。ビタミンAを含む食品は、レバー、うなぎのほか、ニンジンやかぼちゃなどの緑黄色野菜が代表です。ビタミンCを含む食品はキウイ、イチゴ、パプリカ、さつま芋などが代表です。その他、ナッツ類やアボカドなどビタミンEを含む食品も、代謝を高めるのに効果があります。

4.便秘を避ける

便秘は、皮膚病変を生み出す間接的要素です。慢性便秘の人は、それに慣れることなく、最低でも三日に一度の排便がつくよう内服薬の工夫をしてもらってください。

5.塗布剤

保湿が期待されるヘパリン類似物質含有塗布剤(クリームやローション)や、尿素含有塗布剤(クリーム)などがよく用いられます。なお市販の塗布剤にて改善しない場合は、薬剤によるかぶれも考えられるため、塗ることをやめて医療機関を受診してください。

目次

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