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健康長寿サロン

高齢者の肺炎 その特徴とワクチン

お題)

死因として増えている肺炎についての説明を、とのリクエストがありました。

 

1.肺炎とは? 風邪の症状と、どう違う?

《肺炎が疑われる場合の症状》

かぜのような症状が3~4日たっても治まらない・あるいは悪化した、息切れや胸痛、呼吸が速い、ぐったりして食欲がないなどの症状がみられたら、肺炎が疑われます。

肺炎の主な症状は、咳がたくさん出る、熱、寒け、胸の痛み、たんが出る、呼吸困難などで、これらの症状は数日間続きます。呼吸も浅く速く、脈拍も速くなります。酸欠で唇や爪が青黒くなるチアノーゼ(手指などが紫色になる)が出ることもあります。

しかし高齢者は反応する力が落ちているため、こうした症状がまったくみられないことがあります。無熱性肺炎が代表です。食欲や活気は正直なので、「食べなくなった、食べたくないと言っている、食べられなくなっている、元気がない、ぐったりしている、布団から出てこない」といった変化がみられたら、たとえ平熱であっても医療機関を受診してください。

 

 

2.高齢者が肺炎にかかりやすく、治りにくい理由

肺炎は死ぬこともある病気です。しかしながら、50歳ぐらいの人が肺炎で死ぬことはまれです。全年齢では肺炎は悪性新生物(がん)、心疾患に次いで日本人の死因第3位である一方で、50~54歳の日本人女性に限ると第7位です。

亡くなるのは入院して酸素投与や人工呼吸が必要な重篤な肺炎であって、外来でレントゲンを撮ってやっと診断できるぐらいの肺炎であれば抗菌薬で治る例も少なくありません。ただし強力な経口抗菌剤が出てきたとはいえ、肺炎の原則は入院による抗菌剤の点滴です。

「肺炎なら、いつものように抗菌薬で治りますよね」との質問を受けることがあります。とくに肺炎を起こしては治るのを繰り返していたような例では、「肺炎は適切に治療すれば治ります」といった説明が多くされているようです。

しかしながら高齢者に限っていえば、治療の甲斐なく肺炎で亡くなる患者さんはかなりいます。たとえば誤嚥性肺炎を繰り返しているような方は、栄養状態も悪く、大半は他の病気も持っています。

こうした例では、徐々に衰えて最後のひと押しが肺炎といったパターンによく遭遇します。死因は肺炎ですが、老衰ともいえます。

ですから死亡診断書には筆頭死因に「老衰」を書き、関係していた病態に「肺炎」の名を書く場合もあります(ちなみに統計を取るときの死因は、筆頭死因でなく最後の病名が選ばれます。例:筆頭死因が呼吸不全、その原因が肺炎、その原因が脳血管障害である場合、死亡統計で選ばれる死因は脳血管障害)。

高齢者の場合は、こうした説明も必要になってきます。

 

《肺炎になった高齢者の寿命は短くなる》

高齢者の肺炎は絶対に治らないというわけではありませんが、高齢者が肺炎に罹った場合は治療に対する反応が悪いこと、またうまく反応しても、そのあと食べる状態にまで戻らないなど、以前の状態に戻るとは限らない点を知っておく必要があります。

さらに高齢者は、基礎体力が低下していることに加え、免疫力も弱くなっているため、ちょっとしたことでも肺炎になりやすいといった特徴があります。罹りやすくて治りにくいため、肺炎を繰り返すと余命は確実に短くなります。

アルツハイマー病(認知症)を患っており、かつ誤嚥性肺炎と診断された場合の平均余命は『およそ半年』と言われています。

 

 

3.ワクチン(肺炎球菌ワクチン)

細菌性肺炎は特に高齢者に多く、起炎菌としては、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、化膿レンサ球菌が中心です。肺炎球菌は、肺炎以外にも慢性副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などの原因となる細菌です。肺炎球菌は、健康な人の鼻、のど、上気道にしばしば存在し、感染者の呼吸器分泌物(痰、鼻水など)から感染します。

 

肺炎球菌は、90種類以上の型がありますが、予防接種は2種類あります。

その1)ニューモバックスは23種類に対して免疫をつけることができます。

その2)プレベナー13は13種類に対して免疫をつけることができます。

 

肺炎球菌ワクチンの接種方法の概要は、下記の通りです。

(A)「ニューモバックス」既接種者 ⇒ (1年以上空けて)「プレベナー13」を接種

(B)「ニューモバックス」未接種者 ⇒ 「プレベナー13」を接種後、6ヶ月~4年以内に「ニューモバックス」を接種

(C)2つのワクチンの連続接種は海外のデータに基づいており、見直しの予定あり

2つの肺炎球菌ワクチンを併用することで、より高い肺炎予防効果が得られます。

 

これらの予防接種は肺炎球菌が原因となる肺炎の予防をするためのものですが、接種することで、肺炎にかからないというものではありません。

またどちらのワクチンが向いているかは、その人の年齢や現在抱えている病気により異なってきます。かかりつけの医師と相談の上、接種するかしないか、するのであればどちらにするかなどを相談してみてください。

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