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健康長寿サロン

終末期をめぐる話題
(意見交換会 その2)

お題)

(後半)エンディングノート、尊厳死など終末期にまつわる雑談を、とのリクエストがありました。

 

《意見交換会に先立っての簡単な説明と、新聞資料を配布》

救急の蘇生処置 人生の最期をどう看取るか

提供資料1) 読売新聞社説(2019年8月30日)から

終末期の高齢者らの救急搬送に駆けつけた時、心肺蘇生の中止を要望されたらどうするか。各地の救急隊員が重い課題に直面している。総務省消防庁の調査では、全国約700の消防機関の8割がこのような経験を持つ。

蘇生を望まないという意思を示していた高齢者らが自宅や施設で心肺停止となり、気が動転した家族や関係者が119番通報した後、到着した救急隊に蘇生中止を要望するケースが目立つ。

消防によって対応は分かれる。あらかじめ対応指針を定めていたのは約300機関で、このうち3割は「医師の判断などに基づき蘇生を中止できる」としていた。一方、6割は「蘇生をしながら搬送する」という内容だった。「救命」を使命としてきた救急現場の戸惑いがうかがえる。

 

現場からは国が統一指針を示すよう求める声が上がるが、消防庁の検討部会は7月、指針の策定を見送った。「実態把握が現時点で十分でない」との理由からだ。現場の状況は様々で、救急要請が必要な場面もある。消防庁はより具体的な事例を集めて検証し、現場の判断の拠より所どころとなる標準的な手順を検討してもらいたい。この問題の背景には、高齢化の進展と多死社会の到来がある。

全国で一昨年、救急搬送された人は過去最多の573万人に上り、このうち心肺停止状態だった12万人では70歳以上が7割を超えた。在宅医療の普及により、自宅など病院以外での看取みとりを希望する人が増えたことが要因だ。本人の意向を尊重しつつ、救急現場の混乱を招かぬようにするには、人生の最終段階を穏やかに迎える環境の整備が欠かせない。本人と家族、医療関係者が日頃から、終末期の医療に何を望むかについて話し合い、文書に残しておくことも求められる。元気なうちから、万が一に備えて自らの意思を周囲に伝えておきたい。(抜粋)

 

 

2.蘇生拒否の統一対応困難 救急出動で消防庁報告書  

提供資料2) 日本経済新聞 2019年7月3日から

救急隊員が出動現場で心肺停止状態となった傷病者の蘇生処置をしようとした際、家族らから「本人は望んでいない」と告げられる「蘇生拒否」への対応に関し、総務省消防庁の部会は3日の会合で、現段階での統一方針の策定は困難との報告書を決定した。意向を受け入れるべきかどうか難しい判断を迫られる各地の消防本部が策定を求めていたが、実態把握が不十分と判断した。報告書は将来の再検討を求める内容となっているが、消防庁は一定の結論が得られたとして当面、議論は再開しない方針。全国統一ルールの検討は事実上棚上げになる。

人工呼吸や心臓マッサージといった蘇生処置の拒否は、自宅で最期を迎えたいとして、延命は望まないと周囲に伝えていた終末期の患者や高齢者が心肺停止となり、動転した家族や本人の意思を知らなかった関係者が119番してしまって直面するのが代表例。消防庁調査では全国728の消防本部のうち、半数超の403が2017年に拒否を経験した。

国の統一ルールがない中で、蘇生拒否時の対応方針を個別に定めていた消防本部は、消防庁調査によると昨年7月1日時点で半数以下の332。内容は「かかりつけ医の指示など一定条件で蘇生を中止」「拒否されても蘇生しながら搬送」に分かれている。(抜粋)

 

 

3.「蘇生やめて」に救急現場困惑 拒否、17年2000件  

提供資料3)日本経済新聞 2018年10月22日から

病気で終末期を迎えた際に「住み慣れた自宅で最期を」と願う人が多くなる中、救急隊が患者の家族に心肺蘇生を拒否されるケースが相次いでいる。総務省消防庁によると2017年は全国で2千件以上。一方で、5割超の消防本部が拒否の意思が示された場合の対応方針を決めていなかった。本人意思の尊重か、蘇生措置の優先かを巡って現場が揺れている。

 

名古屋市の医師、神谷悦功さん(50)は16年9月、同居する父親の忠さん(当時77)が自宅の風呂場で倒れているのを発見した。既に心肺停止の状態。間質性肺炎を患っていた忠さんからは「もし心肺停止になっても蘇生措置はしないで、ゆっくり死なせてほしい」と伝えられていたことから、救急車を呼ばずに警察に通報した。

警察には事件性なしと判断してもらいたかったが、駆けつけた警察官は「身体が温かい。救急車を呼ぶ」。到着した救急隊にも忠さんの意思を伝えたが「死後硬直が起きていない。ルールとして病院に搬送する」と説明された。結局、忠さんは病院で死亡が確認され、自宅に戻ったのは約6時間後だったという。神谷さんは「2人の娘は『おじいちゃんに触らないで』と泣き叫んでいた。救急隊を責めるわけにもいかないが、家族と父の希望をかなえられず悔しい」と話した。

 

総務省消防庁は18年9月、17年に蘇生の拒否事例が全国728消防本部のうち403本部であり、少なくとも2015件に上ったとする初の調査結果を公表した。拒否の意思を示された場合の対応方針を定めていない消防本部は全体の54%に上った。

消防法は、救急搬送や心肺蘇生などを救急隊の任務と定めるが、蘇生中止に関する規定はない。ある救急隊員は「家族の説明だけでは生前の意思を判断できない。蘇生措置に抗議されてもルールがないので、任務は遂行しなければならない」と明かす。

対策を講じる動きもある。救急隊員や医師でつくる日本臨床救急医学会は17年4月、提言を発表。心肺停止後の蘇生措置を望まないと事前に書面で残している場合もまずは措置を始め、かかりつけ医に直接連絡を取って具体的な指示があれば中止するよう求めた。

 

提言を受け、埼玉県所沢市など5市を管轄する埼玉西部消防局は同12月に具体的な手順書を作った。管内では18年9月末までに17件の該当例があったが、トラブルはないという。同局救急課は「手順書作成前は現場から悩みが報告されていたが、現在は解消された」と効果を語る。こうした取り組みについて、同学会代表理事の坂本哲也医師(60)は「一部にとどまっており、国が統一したルールを設けてほしい」と要望する。総務省消防庁の検討部会は蘇生拒否への対応を含む救急業務のあり方について議論しており、19年1月ごろまでに意見をまとめる方針。同庁救急企画室は「意見を踏まえて今後の対応策を検討したい」としている。

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