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健康長寿サロン

がん に ありがちな初期症状について

お題)

知人がステージ4のがんで闘病中。がんの初期症状が知りたい、とのリクエストがありました。

 

  1.  高齢者に多い がんは?  (国立がん研究センター まとめ)
  • 2017年にがんで死亡した人は、373,334人(男性220,398人、女性152,936人)。
  • 2014年に新たに診断されたがん(罹患全国合計値)は、867,408例(男性501,527例、女性365,881例)。
  • 2016年に新たに診断されたがん(全国がん登録)は、995,131例(男性566,574例、女性428,499例)*。* 性別不詳があるため男女の合計が総数と一致しません。

部位別、都道府県別などの詳細は「外部サイトへのリンク政府統計の総合窓口e-Stat 全国がん登録罹患数・率」をご参照ください。

 

  • 2017年 死亡数が多い部位(臓器)

性別      1位     2位      3位     4位     5位

男性              肺    胃    大腸   肝臓   膵臓

女性           大腸    肺    膵臓     胃    乳房

男女計             肺   大腸    胃    膵臓   肝臓

元データ:人口動態統計によるがん死亡データ(エクセルのnumberシートを参照)

 

  • 男性では、40歳以上で消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)の死亡が多くを占めるが、70歳代以上ではその割合はやや減少し、肺がんと前立腺がんの割合が増加する。
  • 女性では、40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの死亡が多くを占めるが、高齢になるほどその割合は減少し、消化器系(胃、大腸、肝臓)と肺がんの割合が増加する。

 

 

2.臓器別にみた がんの「初期症状」

⑥の前立腺がんを除いて、多くのがんの初期症状は「何もない」ことに留意してください。

① 肺がん

初期は、大半が無症状。

血痰:喫煙者に多い扁平上皮がんは気管支壁に起こるため、血痰として生じやすい。ノドの痛みがある場合は大半が咽頭炎。つまり、ノドが痛くないにもかかわらず喫煙歴があり、血痰が出たら医療機関を受診する。

背中や肩や胸の痛み:肺組織にできたがんが大きくなって胸膜に達すると、痛みが生ずる。胸膜には知覚神経がメッシュのように張り巡らされているため。胸水が溜まる(がん性胸膜炎)場合も理屈は同じ。痛かったり重かったりする。ただし胸水は重力に従って、下に貯留するので、肺の外側の下部分に症状が出やすい。

めまいや手足のマヒ:脳転移したがんによる症状。肺がんは脳に転移しやすい。

 

② 消化器系  その1  胃がん

初期は、大半が無症状。

ハイリスク群は、50歳以上の男性、喫煙歴がある、濃い味が好き、野菜が少なく肉や焦げた魚をよく食べていた人、ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ菌)陽性の人など。

便が黒い(タール便、典型は墨汁のような感じ)、貧血の進行、ふらつきやめまいなどは、胃からの出血が原因。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の多くは痛みがあり、空腹時に強い。食べると楽になる。しかし胃がんの場合、痛みはほとんどないのがフツー。

胃の壁が全体的に硬くなるがん(スキルスがん)では、食べる量が一気に減って体重減少が起こる。進行が早く、生命予後は悪い。

 

③ 消化器系  その2  大腸がん

初期は、大半が無症状。

便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、便に血が付着していた、残便感がある、腹痛がある、おなかに硬いしこりがある、貧血がある、おなかが張るようになった、体重減少など。

便潜血反応は早期発見に有効:市町村の検診でもよく行われる。複数回(二回法、三回法)行うのがよい。痔がある人は、血液が付着していない部分の便でチェックする。

 

④ 消化器系  その3  肝臓がん、胆道系のがん

初期は、大半が無症状。

肝臓がんは、B型肝炎、C型肝炎があったかどうかが大事。ウイルス性肝炎→慢性肝炎→肝硬変となり、そこからがんが出るパターンが典型。

胆管がんは、体重減少と黄疸で気づくことが大半。その他、発熱、食欲不振、みぞおち部分が痛む、ダルさなど。黄疸は、白目が黄色くなったり、尿が濃い黄色になったり、皮膚が黄色くかゆくなったりする。その分、便は白味を帯びてくる。胆管の流れが悪くなるので、胆汁がうっ滞(交通渋滞状態)して肝臓内の胆汁が血液に入るようになるため。

 

⑤ 消化器系  その4  膵臓(すいぞう)がん

初期は、大半が無症状。

腹痛(32%)、黄疸(19%)、腰痛背部痛(9%)、体重減少(5%)、糖尿病の悪化(5%)、食欲低下(4%)がみられることもある。それまで好きだったコーヒーやたばこ、ワインなど嗜好が変わることもある。進行すると突然の激痛や、繰り返す痛みが出てくる。

 

⑥ 前立腺がん

排尿障害(尿が出にくい、尿を出すまで時間かかかる、切れが悪い 前立腺肥大症の症状と同じ)、頑固な痛み(転移した骨の痛み、骨形成性・造骨性 ⇔ 骨が溶けていく:乳がん、肺がん、多発性骨髄腫)。腰椎や骨盤に転移しやすく、転移によって強い腰の痛みや、下半身の麻痺が生じることもある。また骨折(転移した骨の病的骨折)で気づかれることもある。

 

⑦ 子宮がん

初期は、大半が無症状。

不正出血が多い。その他、おりものの変化など。

 

 

参考 1) 高齢者とがん  臓器別にみた「死亡者数」と「罹患者数」

  

75歳以上がん種別がん「死亡」(2012年)        75歳以上がん種別がん「罹患」(2012年)

 

参考 2) 高齢者になると がんが増える理由

高齢者にがん患者が多い理由として最も重視されているのが免疫力の低下。

健康な人であっても人間の身体の中では、常にがん細胞が生成されている。人間には生まれながらに免疫機能が備わっており、がん細胞を攻撃・破壊することで増殖を防いでいる。ところが、年齢が上がるにつれ免疫機能が落ちてくる。本来の役割(自己成分以外の要素に対して、これを除外するように働く)失われてくると、がん細胞を駆除することができなくなるためがん細胞が増殖し、発症するというメカニズム。

国立がん研究センターは70歳以上でがんに罹患している患者1500人を追跡調査し、抗がん剤治療が有効なのは74歳以下と結論づけた。75歳以上では抗がん剤を使わなくとも生存率に著しい差は見られなかったとの分析結果がある。

 

予防としてよく推奨されるのは、バランスの取れた食事(減塩、野菜と果物を多めに、熱いものを避けるなど)、軽度の運動(30~60分程度の歩行など)、ストレスを溜めない(肉体的に疲労しすぎない、あれこれ考えて精神的に悩みすぎない、心配しすぎることによる睡眠障害を避ける ← 心気症は高齢者に少なくないため)ことなど。いずれも免疫力の維持にとって好ましいため。

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