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健康長寿サロン

高齢者における人間関係、こころの健康

お題)

ご近所さんやお隣さんとうまくやりたいのだけれど……とのご意見がありました。

 

人間関係トラブルはどんなものがある?

人間関係のトラブルの原因を突き詰めると、入居者のつらさや寂しさが根幹にあるとされています。今まで一緒に住んでいた家族と急に離れて生活することになったり、慣れ親しんだ土地とは違う地域の施設に入居することになったり、配偶者と死別したり、社会的立場を失ったり、孤独感や喪失感を抱えている入居者はたくさんいます。このような寂しさが人間関係のトラブルを招く行動を引き起こす原因とも考えられています。また、生活習慣や社会的地位による生活環境の違いもあり、考え方が異なるのは当然です。異なる考え方を受け入れられず、言い争いになったり敵意を持ったりすることもあります。

 

高齢者の心理的特徴

高齢者の心理的な特徴には、大きく分けて「精神機能」と「知的能力」があります。

精神機能の老化は、個人差が大きいという特徴があります。その理由は、中枢神経系が年齢を重ねて変化をしていく中で、心理的、身体的、環境的な要因が加わり、その結果として精神機能の症状が出現するからだろうといわれています。

特に記憶に関しては、「新しいこと」を覚えることが困難になります。これは、記銘力(きめいりょく:新しいことを覚える能力)が低下するためです。また、短期記憶の機能も低下するため、直近の出来事を思い出せない、覚えていないということもよくあります。さらに、過去のことについては覚えているものの、思い出すのに時間がかかるようになります。これは想起力(そうきりょく:以前の出来事を思い出す能力)が低下するためです。これらに加え、注意力や集中力の保持をすることが難しくなります。

 

加齢に伴う心理的変化

加齢に伴い、心理的にもさまざまな変化を伴うようになります。

精神機能面を見てみると、感情面や人格面では、高齢者は一般的に、年齢を重ねるとともに頑固になり、保守的傾向が強くなります。また、人に対して厳しくなるとともに、疑いの感情を抱きやすくなるといわれています。さらに、死に対する不安から、自分自身の健康状態への関心が異常に高まることもあります。

さらに、知的能力の面では年齢を重ねても、能力が比較的保たれる一方で、アルツハイマー型認知症など認知症になると、記憶力の低下が顕著に見られるようになります。

これらのことから、高齢者の心理的特徴は年齢のみならず、さまざま病気とも密接なかかわりがあると考えられます。

 

精神的機能が低下する原因

高齢者の精神機能の低下には様々な原因があるということが特徴です。その中で最も重要視したいものの1つに、喪失体験があります。人は誰でも年を重ねるごとに、友人、兄弟、配偶者との死別を経験し、喪失感を味わうことになります。この喪失感はやがて、生きがいの喪失や孤独感の増強をもたらします。

他にも、定年退職による「職業や社会的立場の喪失」や、身体面の老化といった心理的、肉体上の喪失体験も同様に、精神的機能の低下につながる原因にもなります。さらに、身体的な疾患の合併や、身体機能の低下、環境の変化も、精神機能の低下を招く原因になり得ます。

 

若者の精神機能の低下は原因が明確であることが多い一方で、高齢者の精神機能の低下は、様々な要因が複雑に絡み合っていることが多いとされます。また、この精神機能の低下がうつ病を誘発する可能性も指摘されています。

高齢者のうつ病有病率は、比較的軽度なものも含めると、およそ15%であるといわれており、高齢化が進む中で、この割合は年々上昇していくと考えられています。

 

高齢者うつ病の特徴

うつ病で認められる気分障害は,喜怒哀楽という短い感情ではなく,一定時間持続する気分の変動であり,抑うつ気分・悲哀感の持続が中心症状となります。気分の落ち込みに引き続いて,思考・言動・身体症状が順次現れて,病状の回復と共にこの順に消失します。

高齢者のうつ病の特徴として,1.身体合併症を持つ場合が多い,2.環境・心因からの影響が大きい,3.病像が非定型である,4.薬剤の副作用が出やすいことが知られていますが,以下にいくつかの非定型うつ病の特徴を述べます。

《仮面うつ病》

また,高齢者のうつ病では「気分の落ち込み」よりも身体症状を訴えることが多く,「仮面うつ病(マスクト・デプレッション)」と呼ばれます。高齢になると実際に身体症状を持つことが多いのですが,高齢者のうつ病では,あまり大きな身体疾患でない場合にも,不安が強く悲観的な考えにとらわれる場合があり,また,身体症状がうつ病を悪化させる要因ともなります。

 

《仮性認知症としてのうつ病》

「仮性認知症(仮性痴呆)」と呼ばれるうつ病は,うつ病により日常生活が維持できなくなり,認知症と間違われる場合をいいます。日付けや曜日がわからない,朝食の内容が思い出せないなど,記憶力の低下としか思えない症状が見られますが,記憶検査をしてみると,正常であり,実は,うつ病のために周りのことに興味や関心がなくなってしまったための日常生活の乱れであるといった場合です。

 

資料)

公益財団法人 長寿科学振興財団「高齢者の心理学的特徴」

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「高齢者のうつ病」 など

 

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