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健康長寿サロン

帯状疱疹 治療とワクチンなど

お題)

帯状疱疹のワクチンって必要なのかしら? もう少し知りたいとのリクエストがありました。

 

【帯状疱疹とは】

帯状疱疹(たいじょうほうしん、俗にヘルペスとも呼ばれる)とは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされるウイルス感染症の一種です。

 

【原因】

帯状疱疹は、潜伏感染している水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因であって、他人から感染して発症するわけではありません。しかし、水痘を罹患したことがない人物(特に子供・妊婦には注意が必要)には、接触感染などで水痘として感染する恐れがあります。

一度水痘に罹患すると、たとえ治癒しても水痘のウイルスが神経節中に潜伏している状態(潜伏感染)が続きます(この状態自体に害はない)。ストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・HIVの進行、太陽光等の刺激などにより、免疫力が低下すると、神経細胞を取り囲んでいる細胞の中で潜んでいたウイルスが再度増殖します(再活性化)。この増殖によって生じるのが帯状疱疹です。ウイルスがなぜ再活性化するかは不明です。

 

60歳代を中心に50歳代から70歳代に多くみられますが、過労やストレスが引き金で若い人に発症することもあります。年齢が若いから軽症で済むとはかぎらず、その患者の抵抗力により重症度が決定されます。

 

【よくみられる症状】

知覚神経の走行に一致して、皮疹出現の数日前から違和感や疼痛が出現します。

その後一般に帯状に紅色丘疹・浮腫性紅斑・紅暈を伴う小水疱が列序性に出現し、痛みやかゆみを伴う。神経痛・神経障害のみで皮疹が出ないという病態もあります。

耳介やその周囲に水疱を形成した場合、聴神経の障害により眩暈・耳鳴が、顔面神経の障害により顔面神経麻痺が生ずることがあります(ラムゼイ・ハント症候群)。

また臀部下方や外陰部に水疱を形成した場合は仙髄に影響が及び、膀胱直腸障害(排尿障害・尿閉・便秘)を来すこともあります。

 

参考)帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)とは、帯状疱疹に伴う神経痛様疼痛の総称で、皮疹が生じている最中の激しい疼痛と、皮疹治癒後に継続する痛みをいいます。皮疹発症後1〜3カ月を越えて残る疼痛は帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、急性期の炎症によって神経に強い損傷が生じたことで起きます。

帯状疱疹は、どの部位にどの様な形で出るかも不明ということもあり、早めの兆候を見逃さず、症状を過小評価しないことが大切である。特に上記の眼・顔面神経麻痺・膀胱直腸障害は、皮疹出現から1週間以上経過した後に出現することもあり、注意を要する。

 

【なぜ帯状疱疹が増えたのか】

日本では2014年10月から水痘ワクチン(1歳になったらなるべく早く1回目を接種し、その6 – 12か月後に2回目を接種することが推奨)が定期接種となり、水ぼうそうにかかる子どもが激減しました。それにより、ブースター効果が得られなくなり、体内の水痘ウイルスに対する免疫が知らないうちに低下し、帯状疱疹を発症しやすくなっていると考えられています。

これは日本だけのことではなく、すでにアメリカで同じようなことが起きています。

 

【治療】

水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス薬が有効で、点滴や内服による治療により治癒までの期間短縮が期待できます。ただし、ウイルスの増殖抑制効果なので、病初期72時間以内に投与しないと効果が期待できません。よって病初期以外は、症状を緩和する対症療法が主体となります。同時に、安静にして体力を回復することも大切です。

帯状疱疹後神経痛(神経痛様疼痛)は、治癒した後も後遺症として残ることがあります。眼と関係する顔面神経で、神経痛様疼痛が発症した際に、適切な治療をしないと視力に影響が出ることがあります。

 

【帯状疱疹ワクチン】

日本人の成人の90%は、帯状疱疹のウイルスが体内に潜伏しており、免疫力の低下などで、80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症します。現在、帯状疱疹のワクチンとして2種類ありますので、それぞれの特徴をご紹介します。

 

その1 シングリックス(サブユニットワクチン)   自費扱い

日本で開発された不活化ワクチンです。生ワクチンではないため、免疫が低下した人にも使用できます。またその効果は非常に高いといわれます。2カ月ほどの間隔をあけて2回接種することが基本となります。50歳以上の方はとくに重症化しやすいため、ワクチン接種が勧められます。

なお体温が37.5℃以上など接種前に発熱している人、重い急性疾患に罹っていることが明らかな人、予防接種が不向きであると医師からいわれている人は使用できません。

また接種するかしないかを慎重に決める必要がある人は、心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患などの基礎疾患がある場合、他の予防接種で接種したあと2日以内に発熱がみられり、全身性発疹などアレルギーを疑う症状が出たことがある場合、過去に痙攣(けいれん)発作を起こしたことがある場合、過去に免疫不全の診断を受けた場合、血小板減少症や凝固障害を指摘されている場合、抗凝固療法(いわゆる血液サラサラ系薬剤を服用している人)を現在受けている場合などです。

筋肉注射(新型コロナワクチンと同じ)で、費用は自費扱い。二か月間隔で、計二回の接種が必要です。接種後の副作用は、注射した部分の痛みや腫れ、倦怠感、頭痛などで、症状発現は3日~7日以内とされます。

一部の自治体では50歳以上の方に助成金が出されています。

 

その2 弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン)   自費扱い

弱毒化した生ワクチンで小児に使用している水痘ワクチンで、2016年より帯状疱疹の予防も追加承認されました。水ぼうそうウイルスに対するワクチンと同じものです。

ただし生ワクチンなので、著しく免疫が低下した人(HIV感染の方、抗がん剤、免疫抑制剤、副腎皮質ホルモン内服薬使用中の方など)には使用できません。また妊娠中の人も接種できません。1回接種で5年から10年ほど効果が持続するといわれます。

皮下注射(インフルエンザワクチンと同じ)で、こちらも費用は自費扱いです。接種後の副作用はシングリックス同様で、注射した部分の痛みや腫れ、倦怠感、頭痛などで、症状発現は3日~7日以内です。

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