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健康長寿サロン

令和4年秋季~冬季のワクチン

お題)

オミクロン株対応の新型コロナワクチン接種が始まりつつあるとのこと。

秋から冬にかけてのワクチンについて説明を、とのリクエストがありました。

 

 

NHKからわかりやすいまとめが出ていたので、以下にご紹介します。

なお補足説明として、各種ワクチンの概説も加えておきました。

 

資料)NHK首都圏ナビから 2022年8月30日版 、9月15日版、10月6日版を ブレンドして引用

オミクロン株対応のワクチン 開発の背景

WHO=世界保健機関によると、従来のワクチンでもオミクロン株を含むすべての新型コロナウイルスに対して高い重症化予防効果があるとしています。

しかし、従来のワクチンは、従来株に比べオミクロン株への感染や発症予防の効果が低いほか、打ってから時間がたつほど効果が弱まることなどから、ファイザー社やモデルナ社などがオミクロン株対応のワクチンの開発を進めていました。

 

BA.1対応型ワクチンの接種開始を決定

厚生労働省は2022年8月8日、専門家で作る分科会を開き、現在、国内で流行しているオミクロン株に対応したワクチンの接種について審議しました。

その結果、接種の対象を2回目までの接種を終えたすべての人として、10月中旬以降に開始する方針を決めました。

さらに政府は、感染の第7波が続く中で速やかに接種を行う必要があるとして、開始時期を、早ければ9月半ばにも開始する方針を決めました。

厚生労働省は、専門家による審議会でオミクロン株に対応したワクチンの承認に向けた手続きをとることにしています。

 

新しいワクチンは、従来株に由来する成分とオミクロン株のひとつ、「BA.1」の2種類を組み合わせた「2価ワクチン」と呼ばれるもので、今回、日本が導入を決めたのは「BA.1対応型」といわれているものです。

使用を想定しているのはファイザーとモデルナが開発中のワクチンで、薬事承認されれば、政府は、接種事務を担当する自治体とも調整を進めた上で、接種を開始する方針です。

 

ワクチンの効果 ファイザーとモデルナの報告

ことし6月にアメリカのFDA=食品医薬品局にファイザー社が示した臨床試験の結果によると、56歳以上を対象に「BA.1対応型」ワクチンを4回目接種として行ったところ、従来型ワクチンを4回目に接種した人と比べ、オミクロン株の派生型「BA.1」に対しウイルスの働きを抑える中和抗体の値が、平均で1.56倍から1.97倍上昇したということです。

また、現在流行している「BA.5」に対しては、「BA.1」には劣るものの中和抗体の値の上昇がみられたと報告しています。モデルナ社も、「BA.1対応型」と「従来型」による2価ワクチンについて、中和抗体の値を「従来型のみ」のワクチンと比較した場合、「BA.1」に対して平均で1.75倍上昇を示したと報告しています。

 

BA.4/5対応型ワクチン

海外では、FDA=食品医薬品局が、製造販売業者に対して、現在流行しているオミクロン株の派生型「BA.5」の成分を混ぜた「BA.4/5対応型」の2価ワクチンの開発を勧告していますが、EMA=欧州医薬品庁では、2価ワクチンに入れるオミクロン株の派生型によって、効果に大きな差があるとはせず、現時点で絞り込みを行っていません。

 

厚生労働省では「BA.4/5対応型」の2価ワクチンは、輸入が9月よりも遅れるとみていて、いち早く利用が可能な「BA.1対応型」のワクチンを選択しました。

 

接種間隔のシミュレーション

接種は9月20日に4回目をまだ接種していない高齢者や医療従事者などから開始されます。4回目の接種を行っていない60歳以上の高齢者、およそ1400万人や、18歳以上の基礎疾患のある人、そして医療従事者などから、9月半ば以降に受けられます。

 

それ以外の対象者およそ5350万人も順次、オミクロン株対応のワクチンに切り替えられ、10月半ばまでには、全員が新しいワクチンの接種ができるようになる見通しです。また、4回目の接種を受けた人では最も早い人でことし5月に接種したおよそ1万人が、10月25日以降から5回目が打てるようになる見込みです。3回目までを終えた多くの人にとって4回目としてオミクロン株に対応したワクチンが接種できるようになるほか、すでに4回目を接種した人の5回目や、2回目まで接種した人の3回目として使用されます。厚生労働省は年末年始に懸念される感染拡大に備え、希望する人が年内に接種を終えることを目指すとしています。(下の欄に補足説明あり)

 

ファイザー・モデルナ 国内承認申請

オミクロン株に対応した新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカの製薬大手ファイザーは8月8日、厚生労働省に承認を求める申請を行いました。対象は12歳以上で、オミクロン株対応のワクチンの承認申請は国内では初めてです。

ファイザーの発表によりますと、申請したのはオミクロン株のうち「BA.1」と従来の新型コロナウイルスの2種類に対応する「2価ワクチン」(成分が2つ)というタイプで、このワクチンについてファイザーは7月、EMA=欧州医薬品庁に対し、承認申請を行っています。

また、モデルナも8月10日、厚生労働省にこのワクチンの承認を求める申請を行っています。

 

専門家 “従来のワクチン接種予定の人は切替をおすすめ”

新型コロナのオミクロン株に対応したワクチンについて、国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授は、基礎疾患のある人や高齢者の早めの接種を呼びかけているほか、近く、従来のワクチンを接種する予定がある人については「基本的にはオミクロン株対応のワクチンに切り替えて接種することをおすすめしたい」としています。

〇オミクロン株対応ワクチン
接種後の抗体価の上がり方は従来のワクチンと比べ、1.5倍から2倍まで上がるというデータが出ている。重症化を予防することが重要なので基礎疾患のある人や高齢者は早めに接種をしてほしい。また、若い人は後遺症リスクが高いので自分事として接種をしてもらいたい。

〇どのワクチンを接種するか
感染者数は秋・冬の時期には再び増える可能性がある。多くの人がワクチンを打って免疫を持った状態で次の流行に備えるのが大事だ。従来のワクチンを来週、接種できるが、1か月後ならオミクロン株に対応するワクチンを接種できるということであれば、基本的には、オミクロン株対応のワクチンに切り替えて接種することをおすすめしたい。ただ、感染リスクが高いなど早めに接種したい場合は従来のワクチンでも重症化の予防効果はある。

〇ワクチン接種 今後の見通し
ずっと接種し続けるかというと状況は変わると思う。ウイルスの変異がどう出るかにもよるが、順調にいけば年に1回接種すればよいという効果の高いワクチンが出てくると思う。接種の間隔が長くなり、インフルエンザと同じような対応になることが望ましい。

 

 

5歳~11歳の接種 「努力義務」に

5歳から11歳の子どもへのワクチン接種をめぐっては、厚生労働省はことし2月、接種の呼びかけは行うものの、オミクロン株に対する有効性が明確でなかったことなどから、当面は、「努力義務」としないことを決めていました。

しかし、厚生労働省の専門家で作る分科会では8日、オミクロン株への効果や安全性に関するデータが集まってきたとして、接種を受けるよう保護者が努めなければならない「努力義務」とすることが了承されました。

「努力義務」とは

・接種を受けるよう努めなければならないとする予防接種法の規定

・接種を受けるかは本人が選択できる

・法的な強制力や罰則なし

 

 

10月6日版 オミクロンBA4、5対応ワクチン情報など

米ファイザーは、オミクロン株のうち「BA.5」や「BA.4」、それに従来の新型コロナウイルスに対応するワクチンについて、9月13日に厚生労働省に承認の申請を提出していました。厚生労働省の専門家による部会では5日、このワクチンについて、国内での使用を了承し、その後厚生労働省が正式に承認しました。今回了承された「BA.5」「BA.4」などに対応するワクチンの自治体への配送計画もすでに示されています。
10月10日から11月上旬にかけてファイザーのワクチンおよそ4300万回分が配送される計画で、無料で受けられる公的接種に位置づけたうえで、10月中旬以降に接種が開始できる見込みです。厚生労働省はどちらのワクチンもオミクロン株に対して従来のワクチンを上回る効果が期待されるほか、今後の変異株にも効果がある可能性が高いとしています。

 

専門家 “BA.1対応ワクチンでもBA.5対応ワクチンでも接種できる機会を逃さずに接種するというのが基本” 北里大学 中山哲夫特任教授
〇『BA.1』と『BA.5』の違いは従来のウイルスとその後の変異ウイルスの違いと比べると大きなものではない。『BA.1』対応のワクチンでも重症化を防ぐ効果は十分期待できる。いま『BA.1』対応のワクチンを予約しているのならそれを接種すればいいのではないか。前回の接種から5か月たつころに『BA.5』対応のワクチンが実際に出回るなら『BA.5』対応のワクチンを接種すればいいだろう。接種できる機会を逃さずに接種するというのが基本だと思う。

 

 

 

以上が、NHK首都圏ナビ(2022年8月と9月)で紹介されていた内容です。

補足説明を以下にしておきます。

 

補足説明)ワクチンの接種間隔

❶ 新型コロナ2価ワクチン(mRNAワクチン)とインフルエンザワクチン(不活化ワクチン)の実施間隔は、規定なし。同時でも翌日でも、それ以上でも可。

コロナ2価ワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種可であるが、コロナは筋肉注射、インフルは皮下注射なので、同じ日に接種するといっても針は二回打つことになる。

昨年の秋~冬ではコロナワクチンとインフルワクチンは2週間空けていたが、それが撤廃された。

★新型コロナワクチンの接種間隔は「通常、前回の接種から少なくとも5か月が経過した後に接種可能」とされていたが、国の部会にて「短縮すべき」との指摘あり。今後、海外の動向や有効性、安全性の情報を踏まえ「接種間隔を短縮する方向で検討し、10月下旬までに結論を得ることになった。

2022年(令和4年)9月下旬時点では、「5カ月を3カ月」に短縮する案が検討されているとの情報や、直近で新型コロナウイルスに感染した人は、3カ月空けての接種がよいといった話もある。

 

❷ 一方、コロナ2価ワクチンとインフル以外(肺炎球菌、帯状疱疹など)のワクチンの間隔は13日以上空けることになっている。

肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®、プレベナー®)はともに不活化ワクチン。

帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)も不活化ワクチン。

 

 

備考)

1.インフルエンザワクチン

現在の製品は4つの成分が含まれる4価ワクチン。不活化ワクチン。

今年製造されたワクチンは、A型2つ、B型2つの計4成分が含まれる。

A型(H1N1)A/ビクトリア株 →2021/22シーズンの製造株と同一株

A型(H3N2)A/ダーウィン株 →2021/22シーズンの製造株から変更

B型(ビクトリア系統)B/オーストリア株 →2021/22シーズンの製造株から変更

B型(山形系統)B/プーケット株 →2021/22シーズンの製造株と同一株

 

A型インフルエンザの分類(2008年 世界銀行資料)

(H1N1型)スペイン・インフルエンザ  弱毒性だが強度

(H3N2型)香港・インフルエンザ    弱毒性で軽度

(H2N2型)アジア・インフルエンザ   弱毒性で中度

強毒性インフルエンザは過去にみられないが、H5N1型の可能性が危惧されている。

 

  

左の図は、2015年/2016年から4価ワクチンになったことの説明図。

以前はA型2つ、B型1つ からなる3価ワクチンだった。

右の図は、病原性が低い弱毒性(上図)と、病原性が高い強毒性(下図)の説明図。

 

2.ワクチンの種類

❶ 不活化ワクチン

実際のウイルスをホルマリンで加工するなどして、毒性をなくしたものを投与するワクチン。

季節性インフルエンザのワクチンはこの種類で、新型コロナウイルスでは、国内ワクチンメーカーのKMバイオロジクスなどが開発を進めている。日本ではインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどが使用されている。

新型コロナでは、中国のシノバックやシノファームのワクチンが該当する。

❷ m-RNAワクチン

ウイルス表面にあるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報を伝達する物質「m-RNA」を用いる。

m-RNAを人工的に作って注射で投与することで、スパイクたんぱく質が接種を受けた人の体内で作られ、それに免疫系が反応することでスパイクたんぱく質に対する抗体のみが作られる。この抗体は中和抗体の役割が期待されている。

現在の日本で行われている新型コロナワクチンの主流が、このタイプ。

 

③ 組み換えたんぱく質ワクチン

ウイルス表面にあるスパイクたんぱく質を人工的に作り出すワクチンの1つ。遺伝子組み換え技術を使って人工的にたんぱく質を作って投与することで、体内でスパイクタンパク質に対する抗体を作り出す。新型コロナウイルスでは、国内製薬大手の塩野義製薬が開発を進めている。アメリカの製薬会社ノババックスのワクチンもこの種類で、武田薬品が国内向けに供給している。

④ ウイルスベクター ワクチン

スパイクたんぱく質を作る遺伝子を、無害な別のウイルスに組み込んで、そのウイルスごと投与するワクチン。無害なウイルスが細胞に感染して、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を作りだし、抗体が作られる。イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンやアメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンがこのタイプ。

⑤ 生ワクチン

最も歴史のあるワクチンの1つ。実際のウイルスや細菌の中から毒性の弱いものを選んで増やしたもので「弱毒化ワクチン」とも呼ばれる。毒性の弱いウイルスそのものを体内に入れることで、免疫の働きによりウイルスそのものを攻撃する抗体を作り出す。生ワクチンは効果が高いものが多く、麻疹(はしか)や風疹など従来からさまざまな病気に対して使われている。一方で、ポリオなどではまれに生ワクチンによって感染したケースがあり、課題になっている。新型コロナでは、阪大微生物病研究会や東京大学などで研究や開発が行われている。

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