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健康長寿サロン

便秘について また夏季の留意事項など

若いときとちがって便秘がみられるようになり、お通じの薬を常用しています。これは効きますよといって新しい薬が出ましたが、いまいちしっくりきません。高齢者に便秘が多い理由や、どのような緩下剤がおススメか、夏季の留意点などの概説を、とのリクエストがありました。

 

 

1.高齢者に便秘が多い理由は?

便秘と緩下剤について

便秘は弛緩性、けいれん性、直腸性の3タイプに大別され、高齢者に多いのは弛緩性便秘です。「おなかが張って苦しい、ガスが溜まる」といった訴えがよく聞かれ、便は水分含有量が少なく、硬いといった特徴があります。原因は腹筋が弱く、運動不足が関係しています。

けいれん性便秘は若い人に多く、大腸が緊張してけいれん性に収縮し、内容物の通過と排便に障害が起こっている状態です。腹痛をともなう場合があるほか、ストレスによって自律神経が乱れて、大腸が過敏になって起こる場合が多いとされます。

直腸性便秘も若い人に多いタイプです。原因は、便意を我慢することで直腸の神経が鈍くなってしまうためとされます。直腸内に大量に便がたまって水分が吸収される結果、硬くなった便が蓋をした状態が続くことで起きます。

 

高齢者に便秘が多い理由は、以下の8点です。

 

① 腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が低下するため

加齢によって腸管の筋力や神経機能が衰えると、便を押し出す力が弱まります。これが高齢者に便秘が多い一番の理由です。

② 筋力が低下するため

腹筋や骨盤底筋が弱くなるため、排便に必要な力が不足します。これも便秘の大きな理由です。

③ 水分・食物繊維の摂取が足りないため

食が細くなると水分や野菜・果物の摂取量が減ります。このことが便を硬くし、便秘を助長します。

④ 運動量が減少するため

座って過ごす時間が長くなると腸の動きが鈍くなります。これも便秘を助長する要素といえます。

⑤ 薬の副作用もある

高齢者は多剤併用が多いため、便秘を起こしやすい薬が含まれる確率も上がります。たとえば抑うつ気分を改善する抗うつ剤、抗コリン作用を持つパーキンソン病治療薬や過活動膀胱治療薬、降圧剤であるカルシウム拮抗薬、鉄欠乏性貧血の治療薬である鉄剤、がんの痛み止めとして用いられる医療用麻薬(オピオイド)は、便秘を招く薬剤として知られます。このため便を出しやすくする薬剤と併用されることも少なくありません。

⑥ 排便反射の鈍化もある

直腸の感覚が鈍くなって便意を感じにくくなると、排便のタイミングを逃しがちです。そこに上記の条件が重なることで便秘が慢性化していきます。

⑦ 慢性疾患の影響もある

パーキンソン病や糖尿病、甲状腺機能低下症などは、疾患そのものが便秘になりやすい色合いをもっているといえます。

パーキンソン病は、自律神経障害により腸の蠕動運動が低下することや、運動が制限されていくことで便秘になります。

糖尿病は、これも自律神経障害により腸の蠕動運動が低下することのほか、高血糖による脱水、食事制限による摂取量低下が便秘を招きます。

甲状腺機能低下症は、“元気の素”である甲状腺ホルモンが低下することで全身の代謝が落ち、腸の活動も鈍くなります。

⑧ 心理的・社会的要因もある

排便に対する恥ずかしさや、トイレの環境(和式トイレなど)が不便であることも、排便の我慢につながります。

 

 

 

2.高齢者に、よく用いられる便秘対応薬は?

浸透圧性下剤(第一選択になりやすい 塩類下剤とも呼ぶ)

水分を腸内に引き込み、便を柔らかくして便の排出を促します。習慣性がなく安全性が高いため、まず検討されることが多い薬です。「便が硬くウサギのフンみたい」という人には推奨され、長期にわたって服用してもさほど問題になりません。依存性が少ない反面、刺激性下剤より効果は低いとされます。

・酸化マグネシウム(商品名:マグミット、マグラックスなど)→もっともよく使われる。ただし腎機能が低下している例では血中マグネシウムが上昇(高マグネシウム血症)するため要注意。

・乳酸ラクツロース(商品名:ラグノスNFなど)→甘味が強く、腸内環境改善にも有用。

・ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)→味はマイルドで、高齢者でも比較的飲みやすい。

 

刺激性下剤(頓用・短期使用が原則)

腸を直接刺激して排便を促す薬です。腸を刺激して動きを活発化させることで排便を促す薬です。アローゼン、センノシド(プルゼニド)、ラキソベロン内用液(ピコスルファート液)といったおなじみの薬がこれに属し、市販薬も多く出ています。長期間使用すると動きが低下してくるため、服用する量が次第に増えていく例があります。また薬への依存性が生ずることも知られています。けいれん性便秘(精神的ストレスや生活環境の影響を受けて生ずる)の人や、肛門裂傷や痔のある人、また硬結便が終始みられる人や、腸からの出血がある人は不向きです。

・センノシド(商品名:プルゼニド、アローゼン)→就寝前に服用し、翌朝の排便を促します。

・ピコスルファートナトリウム(商品名:ラキソベロン)→錠剤と液体があり、液体が汎用される。通常は10~15滴が用いられますが、微調整が可能です。腸管刺激作用があります。

・ビサコジル(商品名:テレミンソフトなど)→排便誘導に即効性があり、坐剤もあります。

 

上皮機能変容薬(慢性便秘症に)

腸液分泌を促進すことで便を出しやすくします。新しい作用メカニズムの薬で、依存性は少ないとされます。

・ルビプロストン(商品名:アミティーザ)→慢性便秘に用いられます。

・リナクロチド(商品名:リンゼス)→便秘型過敏性腸症候群にも用いられます。

・ エロビキシバット(商品名グーフィス)→自然な腸運動を促すことから、腹痛が少ないのが特徴です。ですから刺激性下剤で腹痛が強いと感じた人にはお勧めです。

 

●座薬・浣腸(即効性)

自力排便が困難な場合や、即時の排便が必要なときに使用します。

・グリセリン浣腸(商品名:グリセリン浣腸、イチジク浣腸など)→即効性があるものの、刺激も強いとされます。

・炭酸ガス坐剤(商品名:新レシカルボン坐剤)腸内でガスを発生することで便意を促します。

 

 

🔍 注意点(高齢者ならではの配慮)

・高齢者は、腎機能が低下していることが多い → 酸化マグネシウムを以前から服用している方は、マグネシウム濃度を一度調べてもらいましょう。腎機能が落ちていると、マグネシウムの血中濃度が上がってきます。高マグネシウム血症の初期症状は嘔吐、筋力低下、傾眠、徐脈、低血圧で、濃度が上がるにつれ意識混濁~消失が生じ、ついには呼吸筋麻痺、心停止が訪れます。

つまり排便状況のみに目がいって、検査をせずに服用だけという人は、マグネシウム濃度のチェックを受けるようにしてください。

 

 

・高齢者は脱水の人が多い → 酸化マグネシウム剤のような浸透圧性下剤や、アミティーザやリンゼスといった上皮機能変容薬では、特に注意が必要です。理由は、腸管内の水分移動を促すため、脱水症のリスクや症状を悪化させる可能性があるからです。

 

💧 脱水症と「浸透圧性下剤」の関係

《浸透圧性下剤の特徴》

腸管内に水分を引き込むことで便を軟化させる点に特徴がありました。

ですから脱水との関係は、腸管内に水分が引き込まれることで、体内の水分が腸へ移動するため、脱水が助長されるリスクがあります。

特に高張性脱水(水分不足で血液が濃くなるタイプ、摂食量が落ちて食事も水も取らなくなった例でよく起こる)の高齢者では、注意が必要! です。

 

🧠 脱水症と「上皮機能変容薬」の関係

《上皮機能変容薬の特徴》

腸管上皮に作用し、腸液分泌を促進して排便を促す点に特徴がありました。

腸液分泌が増えることで腸管内の水分量が増加します。すると体内水分が減少する可能性があります。軽度の脱水症状を悪化させるリスクがあるため、水分摂取量や腎機能の確認が重要といえます。特に高齢者では腎機能低下や多剤併用が多く、薬剤選択に慎重さが求められます。

 

 

・認知機能の低下や、ADLの低下→ 投与されている薬を飲まなくなることで起こる便秘に対しては、坐剤や浣腸などの選択肢も検討されることがあります。

(ADL:日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」といった動作のこと

 

 

 

3.比較的最近になって登場した便秘対応薬は?

比較的最近登場した便秘対応薬には、従来の下剤とは異なる作用メカニズムを持ち、より生理的な排便を促す新薬が含まれます。代表的なのが以下の3種で、上皮機能変容薬と呼ばれます。

  • アミティーザ(ルビプロストン)
  • グーフィス(エロビキシバット)
  • リンゼス(リナクロチド)

それぞれの特徴や違いを、以下に比較解説してみました。

 

 

🔍 3剤の比較表(簡略)

項目

アミティーザ グーフィス リンゼス
作用部位 小腸上皮 胆汁酸の再吸収部位

(回腸)

小腸・大腸の受容体
タイミング 食後 朝食前 空腹時(夕食前)
主な効果 水分分泌促進 胆汁酸増加 → 水分・蠕動促進 水分分泌+腸の感覚抑制
適応 慢性便秘 慢性便秘 慢性便秘

便秘型過敏性腸症候群

依存性 少ない 少ない 少ない
使用上の注意 悪心・脱水 食事のタイミング重要 下痢が出やすい

 

📌 補足:

これらは従来の刺激性下剤とは異なり自然な排便を目指す薬なので高齢者や慢性便秘に適しています。ただし体質や腸の状態により効果や副作用は異なるため、慎重に選択・評価することが重要です。

 

 

 

4.その他、しばしば用いられる緩下剤について

🔶 漢方薬(便秘に用いられる代表例)

漢方は、便秘の原因を「実証」「虚証」「冷え」「水分不足」などと捉え、個別に対応します。

代表的な漢方は以下のとおりです。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう):即効性があるが、短期使用が原則。

麻子仁丸(ましにんがん):潤腸作用があり、高齢者にはよく用いられる。

潤腸湯(じゅんちょうとう):乾燥便秘(便がコロコロ)によく用いられる。

大建中湯(だいけんちゅうとう):腸管の血流改善、蠕動運動促進、冷えの改善、腹部の痛みや膨満の改善することで、腸管運動を回復させる作用がある。冷えや腹痛、食欲低下、腹部の張りなどが併存する寝たきり高齢者の場合は、他の漢方より適している。

 

🔶 腸内環境改善薬(整腸剤)

腸内細菌のバランスを整えて排便を促進します。朝食のとき、牛乳とともに乳酸菌製剤を服用するのは構いません。むしろ高齢者の便秘で、整腸目的にビオフェルミン+牛乳といった組み合わせはよく用いられます。

ビオフェルミン(乳酸菌製剤):腸内細菌のバランスを改善することで自然な排便を促す。安全性が高い。

ラックビー、ミヤBMなど:酪酸菌やビフィズス菌により便通を改善する。安全性が高く、高齢者にも使用しやすい。

 

🔶 バルク形成性下剤(食物繊維系)

腸内で水分を吸収し、便の容積を増やして腸の蠕動を促進します。

プランタゴ・オバタ(ポリカルボフィルカルシウム:ポリフルなど):腸内水分を吸収・保持する作用がある。下痢型過敏性腸症候群や便秘型過敏性腸症候群に汎用される。

寒天や難消化性デキストリン(機能性食品):医薬品ではないが、食事療法として補助に使われる。

 

 

 

5.常日頃から留意しておきたいことは?

高齢者の便秘症において、日常的に留意すべきポイントは、単に排便回数や便性に注目するだけでなく、生活全体・体調・環境との関連性を見逃さないことが重要です。

以下に、現場での実践にも役立つ視点をまとめます。

 

✅ 1. 「いつもと違う便の状態」に敏感になること

  • 便の回数・硬さ・色・においなどが急に変化した場合、腸閉塞、脱水、感染、がんなどの兆候である可能性があります。
  • 「3日出ていない」ではなく、「この人にしては出方が違う」といった個人差を尊重した視点が重要です。

✅ 2. 「便秘=排便回数が少ない」とは限らない

  • 排便があっても、少量ずつしか出ない・残便感がある・苦痛が強いなどは立派な便秘症状です。
  • 排便後に不機嫌・不安・疲労感が強まる場合も、排便困難のサインです。

✅ 3. 生活習慣全体を見直す(排便は生活の鏡)

  • 十分な水分摂取(1日1000〜1500mL目安)
  • 食物繊維の確保(野菜・海藻・穀類)
  • 適度な運動(椅子から立ち上がる・歩くなど)
  • 毎日同じ時間に排便の習慣をつける(朝食後など)

※ベッド上生活では、寝たきりの「腸の動かない便秘」に注意

✅ 4. 薬剤性便秘を見逃さない

  • 以下の薬剤は便秘を引き起こしやすい:
    • 抗コリン薬(パーキンソン病治療薬・抗うつ薬)
    • カルシウム拮抗薬(降圧薬)
    • 鉄剤、抗ヒスタミン薬、麻薬系鎮痛薬など

※中止や変更が難しい場合は、予防的に便秘薬を併用する判断も必要です。

✅ 5. 心理面・生活環境の影響を考慮する

  • 排泄への恥ずかしさ、トイレまでの距離や設備(和式・寒さ)、排便時のプライバシーの欠如などが排便を我慢させ、便秘を悪化させる要因になります。
  • 便秘が続くと、せん妄・食欲低下・転倒リスクの増大にもつながります。

✅ 6. 「刺激性下剤の慢性使用」を避ける

  • センノシド・ラキソベロンなどの刺激性下剤を日常的に使い続けると、耐性・依存が起きやすくなります。
  • 長期管理では、浸透圧性下剤や上皮機能変容薬(アミティーザ、グーフィス等)を織り交ぜ、徐々に変更していくことも一考です。

✅ 7. 排便困難=排便の「姿勢・筋力・意識力」も見る

  • 「いきめない」「トイレに間に合わない」「我慢してしまう」など、身体的・認知的な要因も便秘に大きく影響します。
  • 排便しやすい姿勢(前傾位)や手すりの設置、オムツ使用の適否の見直しも必要です。

 

 

 

6.夏季に気をつけたいこと

高齢者は便秘が重症化すると腸閉塞や虚血性腸炎などの合併症リスクもあるため、季節ごとのケアがとても重要です。

 

☀️ 夏季に便秘が悪化しやすい主な原因

1.脱水や水分不足になりやすい

高齢者はノドの渇きを感じにくいため、水分摂取量が減りがちです。腸内の水分が足りなくなると、便が固くなって排出しにくくなります。

2.食欲不振、食生活の乱れ

暑い日が続くと食欲が落ちます。摂食量の低下のみならず、食物繊維や栄養不足が助長されます。また冷たいものを多く取る傾向もみられるため、結果として腸の動きや働きが鈍くなります。

3.運動不足

連日35℃以上の暑さでは、外出や運動を控える生活を余儀なくされるようになります。それにより腸の蠕動運動が低下します。高齢者は筋力低下もあることから、便が移動しにくくなり便秘の温床になります。

4.自律神経の乱れや、免疫力の低下

冷房と屋外の温度差により自律神経が乱れやすくなり、便秘が助長されます。また腸管神経系は免疫能の中枢機関でもあることから、免疫力の低下も起きやすくなります。

目次

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