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健康長寿サロン

クスリを飲むタイミングについて
食前薬を食後に飲んだらダメなの?

お題)

糖尿病の薬を、漢方と一緒に飲んでいると主治医に伝えたら叱られました。

なぜですか? とのリクエストがありました。

 

 

薬を飲めば胃袋に入ります。それならどういったタイミングで服用しても効果は変わらないはず……と思っている人が少なくないようです。それは正しくありません。それぞれの薬には、服用するにふさわしいタイミングがあるためです。

今回は、薬袋に書かれている「食後」「食前」「就寝前」などの説明をしていきます。

 

1.効果も副作用も血中濃度次第

たとえば、薬をのみ忘れたからといって、次にのむときに2倍量をのんではいけません。また、効き目が感じられないから多めにのむ、症状が軽いから半分だけのむ……というのもダメです。副作用の心配が大きくなったり、十分な効果が得られなかったりするためです。なぜなのでしょうか。

 

薬を飲むことで体内に吸収された薬は、血液とともに全身へと運ばれます。目的とする場所で効果を発揮するには、血液中に溶けている薬の量、つまり薬の血中濃度がカギを握っています。

薬をのむと、徐々にその薬の血中濃度が上がります。そして、血液が全身をめぐるうちに、薬の成分はやがて分解・排出されます。

薬の効き目が現れるのは、血中濃度が一定範囲内にあるときです。濃度が高くなり過ぎれば副作用が出てきますし、濃度が低ければ十分な効果が得られません。

薬の効果を期待したいのであれば、決められた量を、決められたタイミングで飲むことが大事になってきます。

 

 

 

2.速く広がり速く効く順番

ところで薬は、飲み薬だけではありません。注射もあれば、舌下錠のようなスタイルの薬もあります。以下の図をみると、内服は一番ゆっくり体内に移行することがわかります。

注射薬は、内用薬のように消化管を経由することなく、からだの中に薬が直接入っていきます。

最も速く薬が全身へと広がるため即効性が期待できるのは、血管(静脈)への注射です。

皮膚や粘膜から直接吸収される外用薬は、局所で効かせる、速く効かせる、持続的にからだに入れる……といった狙いがあります。たとえば、目薬やかゆみ止めの薬は、局所に効かせたい薬です。

 

また、速く効かせたい薬としては、心臓発作のときに使う「ニトログリセリン」があります。この薬は、口からのんでも効果は得られません。内用薬は、小腸で吸収されて肝臓に入りますが、ニトログリセリンは肝臓でほとんどが壊され、心臓まで届かないからです。そこでこの薬は、舌の下から粘膜を通して吸収させる舌下剤や、口の中にスプレーする噴霧剤として使います。

 

一方、持続的にからだに入れる薬には、気管支拡張薬として用いる「ツロブテロールテープ(ホクナリンテープ)」や、冠動脈拡張剤「ニトロダームTTS」といった貼付剤があります。いずれも時間をかけてじわじわと吸収されるため、血中濃度を一定に保つにはすぐれた薬剤といえます。

このように薬は、狙いどおりのスピードでからだに広がるように作られています。

服薬するタイミングについて以下に順次、説明していきます。

 

 

 

3.服用方法について(薬袋にある指示をカクニンする)

食後、食前、食直前、食間など服薬タイミング

口から水と一緒に飲み込んだ薬は、食道を通過して胃に入り、そこで胃液と混ざります。薬とは化学物質ですから、溶けだすと胃の粘膜などに何らかの刺激を与えます。

このとき、胃に食べ物が入っていると、薬が食べ物と混ざって胃壁に直接触れにくくなって胃への刺激を抑えることができます。

 

また、薬が食べ物と混ざると、腸で有効成分が吸収されるスピードが変化します。このため、薬によっては作用が現れやすくなったり、逆に現れにくくなったりします。

こうしたことから、薬を飲むタイミングは胃の中の環境を考慮して設定されています。

 

 

《食後》 「食後」とは、食事が終わってから30分以内。

内服薬の中で最も多い。食後30分というのは、胃の中で、薬が食べ物や胃酸の影響を最も受ける時間帯。空腹時に飲むと胃を荒らしてしまう成分が入っているかぜ薬や、食べ物と混ざることで吸収が良くなる薬などは、特に食後に飲むことが望ましい。

食後は、食べ物のおかげで配合成分が胃壁に触れにくくなるだけでなく、胃の蠕動運動(胃の内容物を腸に送り出そうとする動き)が活発であるため、有効成分が胃に留まっている時間が短くなり、より早く腸で吸収されると考えられている。

もし食後の薬を、食事をしていない状態で飲まなければならない場合、牛乳1杯でも、クッキー1枚でも口にしてから薬を飲むようにするとよい。

 

《食前》 「食前(しょくぜん)」とは、食事の20~30分前のこと。

胃の調子を整える食欲増進薬や、食べた後の吐(は)き気を事前に抑(おさ)えるくすりなどは、食前に飲むと効果がある。代表的な理由として、食物との相互作用や食物を吸収しようとする体の働きによって、薬の吸収が悪くなってしまう場合や、胃腸の薬のように食べ物を食べる前に薬を効かせて胃腸の働きを良くしておきたい場合などが知られている。

これらのケースは食べ物を口に入れる前に、ある程度薬を吸収させる(あるいは効かせる)必要があるので、薬を飲んだ後もしばらく何も食べない方が良い口から薬を飲んだ場合、その薬が体に吸収されて効き始めるまでに大体30分かかるため、何か食べる前にそれくらいの時間は空けてほしいということ。それが「食前30分」の30分の意味。

漢方:食前または食間に。食後は、吸収が悪くなり、効果が半減する。その他、主治医の指示に従う。

 

《食直前》 食事と一緒に薬を用意して「いただきます」の直前に。

食事の直前に薬を飲めば、当然胃の中ですぐ後に食べたものと薬が混ざってしまう。つまり、「食前:食前30分」とは体の中で起きていることが全く違ってくる。

一番多いのは、血糖値をコントロールするための薬。食べた後に急激に上昇する血糖値をできるだけ押さえる目的。指示どおりに飲まないと、薬を飲む目的を達することができないばかりでなく、低血糖などの副作用が現れやすくなる。

 

《食間》 食事と次の食事の間、それも食後2時間ぐらい経(た)ってからのこと。

食べた物が消化され、胃の中の食べ物が少なくなる。空腹の時の方が、吸収が良い薬剤。

 

《就寝前》 文字どおり寝る前に飲む。

ただし、横になる直前に薬を飲むのはダメ。体が横になっていると、飲み込んだ薬が自然に胃から腸へ流れ出ていくことができにくいから。 薬が胃の中で溶けて吸収される前の状態で、食道の中や胃の中にとどまってしまうと、その部分に異常に「濃い」状態で薬が長時間接触していることになる。これは消化管の粘膜細胞にとって非常に良くない状態。食道や消化管の粘膜の表面が炎症を起こしたり、最悪は溶けて孔(穴)が空いてしまったりすることもある。

 

気をつけるべきポイントとして指摘される点を2つ。

すでに触れたとおり、50㏄程度の水でよいから、とにかく水と一緒に服用すること。多めの水で飲むに越したことはないが、高齢者は夜トイレに行く人が多いことから、良質な睡眠を確保するためにも多量の水を飲むことは勧められない。

次に、横になる(寝る)「10分から20分くらい前に飲む」ようにする。

具合が悪くて床に伏せっているときでも、薬を飲むときだけは上半身を起こすか、その後トイレに立つなど工夫をして、体を起こした状態を作るのがよい。

 

《頓用(頓服)》 症状が出た時や出そうな時に、随時くすりを使う「頓服(とんぷく)」のこと。

このときも必ず水と一緒に飲むことを習慣づけるとよい。

 

 

 

4.食べ合わせなど避ける必要がある場合

《牛乳》

ニューキノロン系、テトラサイクリン系の抗菌剤、鉄剤、制酸剤など。

牛乳にはカルシウムなどのミネラルが多く含まれているため、飲み合わせには注意が必要です。牛乳と薬を一緒に飲むと、薬の成分とカルシウムが結合して吸収が弱まり、効果が減ってしまうことがあります。

また腸溶性薬剤(胃で溶けず、腸に到達してから溶けるようにコーティングしてある薬剤)は、牛乳との併用で腸溶性が失われてしまいます。

牛乳を飲む場合は、薬と飲む時間と2時間以上空けるようにしましょう。

 

《グレープフルーツ・ジュース》

ある種の降圧剤(カルシウム拮抗剤、利用者は多い)、高コレステロール血症に対する脂質異常症治療剤、睡眠導入剤のトリアゾラム(ハルシオン)、抗けいれん剤など。

グレープフルーツの果肉に含まれるフラノクマリン類とよばれる成分が、小腸上皮にある薬物代謝を阻害して、薬物の血中濃度を上昇させてしまいます。結果として薬の効きすぎにより、血圧が下がったり、頭痛、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。

 

《納豆、クロレラ、緑黄色野菜》

抗血栓薬のワルファリン(ワーファリン)や、ジゴシンなどのジギタリス製剤、テオフィリン、フェニトインやカルバマゼピンなどの抗けいれん薬、アミオダロンなどの抗不整脈薬など。

納豆やクロレラ、青汁にはビタミンKや納豆菌が含まれており、これらがワーファリンの働きを弱めてしまうことから、薬の効果(血液をサラサラにする)が期待できなくなります。

パック入りの納豆のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

 

《セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)

ワルファリン(ワーファリン)やイグザレルトなど “血液さらさら系” の薬、ジゴシンなどのジギタリス製剤、テオフィリン、フェニトインやカルバマゼピンなどの抗てんかん薬、アミオダロンなどの抗不整脈薬など。

セイヨウオトギリソウも、ビタミンKが多く含まれます。このため薬の効果が減ってしまいます。

 

備考)セイヨウオトギリソウ

抗うつ効果が期待されるといった話から、ハーブティーやお茶のほか、サプリメント(健康食品)に含まれることがある。ハーブティーやブレンド茶などには、複数の薬草・ハーブが使われることがある。

一方、日本の薬事法では、セイヨウオトギリソウは薬効を標榜しない「食品」扱いなので、「セイヨウオトギリソウ含有食品」となる。このためセイヨウオトギリソウ含有食品には、原料表示等によりセイヨウオトギリソウを含有していることを明示することが求められている。たとえば「セイヨウオトギリソウ濃縮物」「セント・ジョーンズ・ワート濃縮物」など。

(東京都健康安全研究センターHPなどから)

 

《カフェイン(コーヒーなど)》

抗うつ剤、抗けいれん剤、睡眠導入剤のゾピクロン(アモバン)、ゼンソクの薬、ある種の抗菌剤、アスピリン(濃度上昇)など。

薬剤により、ややメカニズムやが異なります。

  • ネオフィリン、テオフォリン;カフェインが代謝、排泄を遅延し、過度の中枢神経刺激作用が現れることがあります。
  • タガメット(シメチジン);タガメット(シメチジン)がCYP1A2を阻害し、過度の中枢神経刺激作用が現れることがあります。
  • ルボックス(フルボキサミン);ルボックス(フルボキサミン)がCYP1A2を阻害するため、血中濃度が上昇する可能性があります。
  • リチウム(リーマス)では、カフェインの利尿作用で排泄が促進されて、効果が薄れる可能性があります。
  • シプロキサン(シプロフロキサシン);シプロキサン(シプロフロキサシン)がCYP1A2を阻害するため、神経過敏、頭痛、下痢などが出現しやすくなる可能性があります。
  • テルネリン(チザニジン);テルネリン(チザニジン)は主にCYP1A2による代謝を受けるため、カフェインと代謝が拮抗して、薬の効果が遅れる可能性があります。
  • ロゼレム(ラメルテオン);ロゼレム(ラメルテオン)は主にCYP1A2による代謝を受けるため、カフェインと代謝が拮抗して薬の効果が遅れる可能性があります。

 

 

《お酒》

消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)、利尿剤、糖尿病薬、抗血栓薬(ワーファリンなど)、睡眠導入剤(ハルシオンやレンドルミンなど)、抗うつ剤など。

それぞれの薬によりメカニズムが異なっているのが、お酒の特徴です。

消炎鎮痛剤は、お酒と一緒に飲むことで胃粘膜が荒れるリスクがあります。

睡眠導入剤は、飲酒により効果が強く出る可能性があります。

糖尿病治療薬は、アルコールによる酔いが増して「悪酔い」する可能性があります。また薬が効きすぎて低血糖になるリスクも増します。

抗血栓薬は、飲酒により効果が増して、血が止まらなくなるリスクが増します。脳出血、胃などの消化管からの出血つまり吐血や下血などが起きやすくなるということです。

利尿剤は、飲酒により副症状である血圧低下、めまいなどが起きやすくなります。

抗うつ剤は、飲酒により血中濃度が上昇し、効きすぎてしまうことがあります。その結果、精神の錯乱、幻覚、手指の震え、食欲低下などのほか、悪酔い、ひどい二日酔いといった症状が出ることもあります。

 

 

《光線》

飲み薬やシップに複数あり。光線過敏症や、皮膚がんを誘発させる可能性のある薬剤などが含まれる。抗菌薬、痛み止め、血圧降下薬(降圧剤)、糖尿病治療薬、添加物など。シップでは、モーラス(ケトプロフェン)類が代表。

薬剤や食品などを口に入れたあと、日光を浴びることで皮膚にトラブルが生ずることがあり「薬剤性光線過敏症」と呼ばれます。

光線過敏症の原因となる薬剤にはクロモフォアとよばれる分子構造を持つものが多く、経口や接触(貼布剤)により体内に取り込まれると、そこに日光(通常はUVA:波長が315~400 nmと最も長い紫外線)が当たることで化学反応が起き、皮膚に炎症が生じます。

 

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