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健康長寿サロン

令和6年夏の新型コロナウイルス感染症
および秋から始まるワクチンについて

夏に入って、新型コロナウイルス感染症が増えているとのニュースが続いています。

2024年夏季の感染状況や、秋から始まるワクチンについてお話をとのリクエストがありました。

 

 

やっぱり増えた 夏季のコロナウイルス感染症

2024年の夏における新型コロナウイルス感染症の状況については、複数の報道があります。

厚生労働省の報道発表資料によれば、毎年8月に新型コロナウイルス感染症のピークが訪れているとあります。また直近の報告では、感染者数がこの夏も増加しており、入院者数も5カ月ぶりに3,000人を超えました。新規患者数も10週連続で増加しています。

 

下の図は、NHKが毎週統計を取って公表している感染状況です。「定点把握」のデータは、毎週、日曜日までの1週間に確認されたデータが、金曜日に厚生労働省から「速報値」として発表されます。その後、詳しい確認を積んだデータが、翌週火曜日に国立感染症研究所から発表されます。

最初(上段)が全国の状況であり、次(下段)が熱海市が含まれる静岡県の状況です。

第11波と呼ばれる2024年夏の全国の状況は、すでに前回の第10波に届こうとしていますが、患者数は8月に入ってやや減りつつあるようです。

 

静岡県の状況も似ており、まもなく第10波のピークに届くようにみえますが、全国同様で8月に入ってやや減りつつあるようです。

 

 

NHK NEWSWEBには、「都内の新型コロナ感染者数 “8月中旬にかけピーク” AIで試算」との記事が掲載されていました。以下に供覧します。(2024年8月2日 17時43分)

 

新型コロナの今後の感染状況を名古屋工業大学のグループがAI=人工知能を使って試算したところ、ワクチンや感染による免疫にある程度効果があると想定した場合、東京都の感染者数は今月中旬(つまり8月中旬)にかけてピークとなり、一日当たりおよそ8,700人になるという予測となりました。

 

名古屋工業大学の平田晃正教授のグループは、これまでの新型コロナの感染者数の推移に加え、ワクチンや感染による免疫の効果、それに各地の人出などのデータをもとに、AIを使って今後の感染状況を予測しました。

それによりますと、人出が去年と変わらず、ワクチンや過去の感染による免疫が現在流行している変異ウイルスに一定の効果があると想定した場合、東京都の感染者数は今月中旬(つまり8月中旬)にかけて高止まりし、ピーク時には1週間平均で一日当たりおよそ8,700人、1医療機関当たりの患者数は、ピーク時で9.5人と予測されるということです。

 

一方、ワクチンや、過去の感染による免疫が現在の変異ウイルスにあまり効果がないと想定した場合、ピークは今月下旬となり、一日当たりおよそ1万1700人、1医療機関当たりでは12.75人になると予測されています。

平田教授は「発熱などの症状があっても医療機関を受診しない人が増えていることから、実際の感染者はAIの予測以上にいる可能性がある。ワクチンを接種する人が減り、重症化リスクが高い高齢者も少なくない。体調を整えたり換気をしたりして、感染対策に気をつけてほしい」と話していました。

 

専門家「感染者の増加やや緩やかも注意必要」

新型コロナウイルスの感染状況について、感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎客員教授は「感染者の増加のペースはやや緩やかになっていて、九州や沖縄、四国では、すでに頭打ちになったり、減少傾向がみられたりしている地域もあるが、全国的にはお盆やその先くらいまでは感染拡大が続くと考えられ、引き続き注意が必要だ」と話しています。

また、夏に感染が広がる背景や対策について「暑さのためマスクをする人が少なくなることや、空調が効いた屋内で密な空間ができて、飛まつ感染が起きやすくなることなどが考えられる。換気の徹底や、電車など混み合う場所ではマスクを着けるなどの対策をとってほしい」と指摘しました。

そのうえで、新型コロナの検査や治療の公費負担が無くなったことで、医療機関の受診を控える人がいる可能性があるとしたうえで「高齢者は重症化するリスクが高いので、のどの痛みや発熱などの症状が出てきた場合は、ためらわずに医療機関を受診してほしい」と話していました。

 

 

この記事は新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの効果や、過去の抗体効果を占う上で興味深いと感じました。なぜならピークが8月中旬ならこれまでのワクチンはほぼ有効、ピークが8月下旬にズレ込んで一日あたりの感染者数が1万を越えるようなら、ワクチンや過去に罹患したときに生まれた抗体の効果が期待できないという話になるからです。

 

 

 

2024年夏 新型コロナウイルス感染症の特徴 変異株KP-3

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について、令和6年第26週(6/24~30)、新型コロナワクチンQ&A、新型コロナワクチンについて(厚生労働省)や、新型コロナウイルス感染症サーベイランス月報発生動向の状況把握(国立感染症研究所感染症疫学センター 2024年5月)などの資料からまとめてみました。

 

厚生労働省が2024年7月5日に発表した令和6年第26週(6/24-30)の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について」によると、4月の終わりを底に 8週連続で増加していており、6月以降は急増しています。沖縄は高水準で流行が継続しており、鹿児島、熊本、宮崎、佐賀など九州で流行が拡大しています。また沖縄ではインフルエンザも増えています。

 

新たな変異株KP.3が急増

国立感染症研究所感染症疫学センターでは、新型コロナウイルスに関するデータを発表しています。それによると、検出した新型コロナウイルスはBA.2系統が75.37%。なかでもKP.3という株が54.48%と最も多くなりました。KP.3はオミクロン株の一種ですが、ワクチンや感染による中和抗体による免疫からの逃避の可能性が高く、以前感染したことがある人でも、再感染しやすいといわれています。一方、症状については過去に流行したBA2.86などとそれほど変わらないと見られています。

 

……ちょっと詳しく)

オミクロン株とは、以前 世界の感染者のほとんどを占めていたデルタ株とも、また当初流行した従来株(俗に武漢型)とも、一部の遺伝子配列が異なっている変異株です。感染力が非常に強く、世界中であっという間にデルタ株からオミクロン株への置き換わりが進みました。

このような遺伝子の変異により全く別の性質を持つようになった新しいウイルス株を変異株と呼んでいますが、一方で同じウイルス型や株分類の中での遺伝子配列が異なるものを亜系統と呼んでいます。亜系統の種類として、オミクロン株の流行初期の系統がBA.1、さらにBA.1-1やBA.2が報告されていましたが、「KP.3」はオミクロン株の「JN.1」から派生したウイルスで、日本だけでなく、欧米などの北半球で流行の主流になっています。

 

なお厚生労働省は、2024年5月29日に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」を開催し、2024年度秋冬の新型コロナワクチンの定期接種で使用するワクチンの抗原構成について、JN.1系統を使用することを決定したとの報道がありました。

 

 

 

2024年夏 コロナ感染症 Q&A

よく聞かれる質問と、お答えを簡単にまとめておきました。

QⅠ)新型コロナウイルス感染症の潜伏期間は?

コロナの潜伏期間は、新たな変異株KP.3も含め2〜4日程度、長くても7日以内といわれます。

発症後5日間は感染リスクが高いことから、コロナに罹患したとわかった場合、5日間は外出を控えることが推奨されています。

発症直前や発症直後は特にウイルスの排出量が多く感染力も強いことから、一緒に住んでいる家族は注意が必要です。感染力が強いため、濃厚接触者や無症状の人からも うつる可能性があります。

 

Q2)新型コロナウイルス感染症でみられる症状は、何日ほどで消える?

約1週間ほどで完治することが多い新型コロナですが、症状が軽くなるのは発症後3~4日とみられます。その後、症状はさらに軽くなっていき、7~10日目には完治に近い状態となる例が大半です。

一方で、咳や痰が減らないなど、気管支炎が長引く人が一定数いることもたしかです。

また持病としてゼンソクのある人は、普段は収まっていたゼンソク症状が感染症を契機に出やすいこと、さらに後遺症に長期間悩まされる人がいるといった事実も忘れないでください。

ちなみに新型コロナでいわれる「軽症」とは「症状が軽いということ」とイコールではありません。

咳が頑固で、頭痛や発熱の症状がつらく、ダルくて起き上がることもままならない状態であっても「軽症」に属します。肺炎や呼吸不全、多臓器不全などがみられなければ「軽症」という扱いになるということは、知っていてください。

 

Q3)新型コロナウイルス感染症に罹った人が、他人にうつすリスクはいつまで?

新型コロナウイルスは7~10日までは、他人にうつす可能性があります。多くの場合、発症後5日ほどで症状は治まりますが、その後もウイルスを排出する期間は続きます。2022年の米国医師会の研究によると、発症後14日目になると抗原検査でほとんどの人が陰性になったと報告されています。

つまり症状がなくなったからうつしてしまうリスクはないというわけではなく、ウイルスが排出される期間と症状の有無はイコールではないと理解しておくことが大切です。

 

職場に行ける日はいつから? といった相談も多いですが、現状は5日間の休み明けからが多く、次いで7日間の休み明けからです。カウントは、症状が出た日が0日目。翌日を1日目とカウントし5日目まで休むというのが2024年に多いルールです。しかしその期間が終わっても症状が出ている人は継続療養が必要になります。また会社や団体によっては独自の決まりがあるケースもあるため、会社の人事などに問い合わせて出社する時期を確認しておく必要があります。

 

Q4)2024年にみられた新型コロナウイルス感染症の症状は?

2023年9月の第9波や2024年以降にかけて起こった第10波では、喉のイガイガ感といった咽頭部違和感、咽頭痛、発熱を主訴とする人が多くみられました。2024年4月以降はJN.1株が落ちつき始めていましたが、5月中旬をめどにKP.3株による感染者が増えています。

 

新型コロナウイルス感染症の症状は、いずれの株であっても発熱前は喉の痛みや違和感が多く、発熱したあとは咽頭痛、頭痛、倦怠感といった症状がメインです。また食欲不振、嗅覚障害、胸部不快感、胃腸炎、重度の下痢などが共存する例もあります。ノドの違和感や痛みがあったら、翌日以降に発熱しないか注意してください。

ノド症状あり+翌日の高熱=コロナ疑い濃厚 と覚えておくと便利です。

 

嗅覚障害や味覚障害は、以前の株よりはみられなくなったとの報告が多いようです。

嗅覚障害は、鼻汁などの分泌物が多いと嗅覚を感知する細胞が分泌物でおおわれるため上気道感染症ではしばしばみられます。一方の味覚障害は、インフルエンザなど急性発熱性消耗疾患のときもよくみられます。いずれも一過性であることが多いのですが、従来の新型コロナでは、後遺症として長きに渡って悩まされるケースもありました。

 

 

 

秋から始まるワクチンについて

令和6年(2024年)度から新型コロナワクチンの接種は「定期接種」に位置づけられ、65歳以上の高齢者等の方が接種の対象となります。

令和6年度以降の新型コロナワクチンの接種については、個人の重症化予防により重症者を減らすことを目的とし、定期接種(B類)として実施することとなっています。

定期接種の対象者は以下の方です。

  • 65歳以上の方
  • 60歳から64歳までの一定の基礎疾患(※)を有する方

※心臓や腎臓、呼吸器の機能の障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方や、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方などで、インフルエンザワクチンの定期接種の対象者と同じです。

定期接種のスケジュールは、感染症の状況やワクチンの有効性に関するデータを踏まえ、毎年秋冬に1回行うこととしています。

 

なお定期接種の対象者以外の方や、定期接種のタイミング以外で接種する場合については、「任意接種」としてワクチンの接種を受けることができます。

 

 

今年度から一部自己負担が求められる新型コロナウイルスのワクチン接種の定期接種では、接種費用の一部が国の交付税で補助されることになり、定期接種の自己負担額を最大でおよそ7,000円にすることが正式に決まりました。

これによって、来年度からは定期接種の対象者の自己負担額は最大でおよそ7,000円になることが正式に決まりました。

自治体の独自の補助がある場合はさらに安くなる可能性があります。

一方、定期接種の対象者以外の人は「任意接種」となるため、自己負担額は7,000円を超える見通しです。

 

なおワクチンメーカーのうち、インフルエンザワクチンの製造をこの秋から取りやめた(撤退)メーカーが2つあります。

つまりインフルエンザワクチンの供給量は、昨年より少なくなると見込まれています。

一方で、2つのメーカーは新型コロナウイルスに対するワクチンの製造をすることが決まっているため、ワクチンは海外生産の製品と、国内生産の製品が出てくることになります。

 

 

 

その他の話題 雑感

沖縄県は2024年8月2日、県内53定点医療機関で7月22~28日の1週間に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数が、1医療機関当たり16.51人だったと公表しました。

感染者数は3週連続の減少で、新規入院患者は8週ぶりに100人を切りました。

一方でインフルエンザの感染が広がり、定点当たりの新規患者数は6週連続増の9.83人で、注意報を出す基準の10人の「一歩手前の状態」(県感染症対策課)となっていました。

同課によると、沖縄ではインフルエンザの患者数が増えているものの、インフルエンザのワクチンが打てるのは例年秋ごろになるため警戒を強めているようです。「コロナはやや収束に向かっているが、インフルエンザの感染が増えており、まだまだ気は緩められない」とのメッセージが発せられ、手洗いやうがい、せきやくしゃみをする際のティッシュやマスクの使用を呼びかけていました。

なお8月時点では、インフルエンザの全国的な流行傾向はないとのことです。(「沖縄だけ? インフル感染増加 注意報 一歩手前の状態  全国的な流行傾向はなし 対策呼びかけ」 琉球新報 8月2日)

 

これまで夏季の発熱といえば脱水症、そのあと近年では新型コロナウイルス感染症というのが相場でした。夏にインフルエンザは流行しないとの経験則から、夏季のインフルエンザは はなから疑われませんでした。だから検査もされなかった。その結果、夏はいつもインフル感染者「ゼロ」といった “事実” が生まれていただけのことかもしれません。

 

 

雑感)

新型コロナウイルスが地上に登場した当初、必要な情報はほとんど入ってきませんでした。

そのあといろいろなことがわかってくるにつれ、情報も豊富になってきましたが、それでも発熱外来に振り回される現場では 使える情報が足りず、手探りの状態が続きました。

手ごわい感染症であると報道されたところで、100年に一度のこと。身近な例を経験したことのないわたしたちには想像できませんでした。え? と思うのは、いつだって報道経由の情報でした。なかでも志村けんさん、岡江久美子さん、千葉真一さんといった有名人の死亡が複数報道されるようになって、手ごわい感染症だとの認識が徐々に生まれていったような気がします。

 

現場で使える情報としてありがたかったのは、各テレビ局が展開する報道番組や情報ワイド番組でした。パネルで説明する識者の説明がわかりやすかったのです。司会者やレギュラーゲストなどによる素人目線からの質問も、的を射ていました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)や、その感染症(COVID-19)といった概念が、世のなかにまだ定着していない時期だったからです。

事前に何時間も情報を詰め込んで意見交換しているはずの司会者や、多角的視点を持ったゲストさんは、誰もが知りたがる広角的な質問をしていました。

医療関係者も、新型コロナに関しては一般の人同様、素人でした。

 

現場では、名のある感染症学者の説明より、感染症に詳しい一般医師たちの説明や著書が役に立ちました。多少の凸凹があったり見方に偏りがあったところで、そもそも現場から偏りを除外することはできません。コロナに関していえば、病院のルールは クリニック/診療所のルールと同じではなかったし、医療機関のルールは 弱者を収容する施設と同じではありませんでした。この状況で何をすべきかは、現場が置かれた状況のなかで個々に解を出す必要があったのです。

しかしこうした環境はちがっていても、そこには共通した認識がありました。ひとことでいえば「感染しないルール、感染を必要最小限に食い止めるルール」です。

 

 

その認識が変容していったのは、コロナが五類になってからと感じます。

5月のGWは大勢の人が移動しました。それでもコロナが爆発的に増えたという話はありませんでした。例年のように夏の感染者増多はホントウに起こるのか? ……そうした思いは、医療関係者の間にもたしかにありました。

上に掲げたグラフをみても、目に見えて増えてきたのは7月に入ってからでした。

 

そういえば電車に乗っていて咳をしている人が複数いたため窓を開けようとしたら、冷房が効かなくなるからやめてくれとの声が複数あったため ふたたび窓を閉じたといった話を、先日耳にしました。

病院では医療従事者はもちろん、事務員さんから助手さん、清掃スタッフまで顔をピタリと覆うN95マスクを付けて仕事をしていた、高齢者施設ではあちらでもこちらでも感染者が出ているといった話を耳にした日と、同じ日でした。

市民に認識の変容が生じ、コロナに向かうベクトルがバラバラになっているのです。

 

発熱外来で感染が明らかになった人の何人かに問うたことがあります。「振り返ってみて、きっとあのとき感染したのだと思いあたることはありますか」。すると、以前なら飲み会や食事会、家族からといった話がよく聞かれました。けれどもこの夏はこうした話がなく、感染経路不明者が大半なのです。マスクなしの人が増えたからでしょうか? それとも感染力が強いウイルスだからでしょうか?

あるいは感染していても症状がないか、極めて乏しい無症候性感染者が多いのでしょうか。

発熱しても市販の風邪薬を服用することで乗り切れる人がかなりいます。そのこと自体はよいことですが、実数の把握はできません。 第9波、10波、11波と呼ばれる時期の感染者の実数は、報道されている数よりもっともっと多い可能性があります。

 

 

 

参考資料)

「感染症データと医療・健康情報」(NHK HP)

NHK NEWSWEB(2024年8月2日 17時43分)

「新型コロナワクチンQ&A」(厚労省HP)

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について令和6年第26週(6/24~30)、新型コロナワクチンQ&A、新型コロナワクチンについて」(厚労省)

「新型コロナウイルス感染症サーベイランス月報発生動向の状況把握」(国立感染症研究所感染症疫学センター 2024年5月)

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