便秘に対する治療薬
お題)
便秘対応として、市販薬ではなく医療機関でもらえる薬について、とのリクエストがありました。
便秘と緩下剤について
便秘は弛緩性、けいれん性、直腸性の3タイプに大別され、高齢者に多いのは弛緩性便秘です。「おなかが張って苦しい、ガスが溜まる」といった訴えがよく聞かれ、便は水分含有量が少なく、硬いといった特徴があります。原因は腹筋が弱く、運動不足が関係しています。
けいれん性便秘は若い人に多く、大腸が緊張してけいれん性に収縮し、内容物の通過と排便に障害が起こっている状態です。腹痛がともなう場合があるほか、ストレスによって自律神経が乱れて、大腸が過敏になって起こる場合が多いとされます。
けいれん性便秘の方は、腸内環境を整えてくれる働きがある水溶性食物繊維を含む海草やこんにゃくなどを意識して食べると効果的です。逆に不溶性の食物繊維(根菜、緑黄色野菜、きのこ、豆類など)は大腸への刺激が強く、症状が悪化する恐れもあるので摂取は控えましょう。
直腸性便秘も若い人に多いタイプです。原因は、便意を我慢することで直腸の神経が鈍くなってしまうためとされます。
直腸内に大量に便がたまって水分が吸収される結果、硬くなった便が蓋をした状態が続くことで起きます。水溶性食物繊維と水分を積極的に摂って、やわらかく量のある便の状態を作ることが推奨されます。刺激性の下剤は、お腹が痛くなる原因なので不向きです。朝食をしっかりとり、朝はトイレに行くといった規則正しい習慣をつくることも大切です。
高齢者に多い弛緩性便秘の治療薬としては、経口的に投与する「刺激性下剤」と「塩類下剤」が代表です。
「刺激性下剤」は、腸を刺激して動きを活発化させることで排便を促す薬です。長期間使用すると動きが低下してくるため、服用する量が次第に増えていく例があります。また薬への依存性が生ずることも知られています。
アローゼン、センノシド(プルゼニド)、ラキソベロン内用液(ピコスルファート液)といったおなじみの薬がこれに属し、市販薬も多く出ています。刺激性下剤が不向きな例は、けいれん性便秘(精神的ストレスや生活環境の影響を受けて生ずる)の人や、肛門裂傷や痔のある人、また硬結便が終始みられる人や、腸からの出血がある人などです。
「塩類下剤」は刺激性下剤とちがって腸を刺激するのでなく、便自体に働いて水分を増やすことでやわらかくし、便の総量をアップすることで排泄しやすくする薬です。市販薬・サプリメントに多い膨張性下剤や、腸内の動きを滑らかにすることで便秘を改善する潤滑性下剤とともに、機械性下剤に属します。
「便が硬くウサギのフンみたい」という人には推奨され、長期にわたって服用してもさほど問題になりません。依存性が少ない反面、刺激性下剤より効果は低く、酸化マグネシウム(マグラックス、マグミット)が代表です。ただし、腎機能が高度に低下している人は高マグネシウム血症を招くため要注意です。
経口的に投与した下剤に反応しない例では、下剤坐剤(座薬)や、胃腸機能調整剤、整腸剤などが組み合わされます。
座剤(坐薬)は即効性があり、新レシカルボン坐剤やテレミンソフトが定番です。また、排便後に意識消失発作やショックを起こさないか見守る必要があるのも坐剤の留意点です。
胃腸機能調整剤は、弛緩して動きが鈍くなっている腸管を少しでも動かす目的で使われます。ガスモチン(モサプリドクエン酸塩)やパントシン(パンテチン)、漢方薬の大建中湯などがあります。
乳酸菌製剤は整腸剤として知られ、腸内環境をよくする目的で使われます。ヨーグルトや牛乳同様、すべての人に効果があるわけではありません。
備考)医療機関受診が必要な症状や所見
吐き気や嘔吐がある、一週間以上排便がなく苦しい、普段とはちがう便秘や腹痛がある、便に血液や粘液が付いている、悪寒戦慄や高熱がある、残便感が増している、便秘と下痢を繰り返すようになっているといった症状がある場合は、医療機関を受診してください。単なる便秘や排便異常ではない可能性が高いためです。