冬場に多い心筋梗塞と脳梗塞 留意点など
お題)
冬に気をつけること、とくに急死する病気について、とのリクエストがありました。
国立循環器病院のまとめを紹介します。
国立循環器病研究センター・ホームページ 広報活動欄から 平成30年4月25日
国立循環器病研究センター(略称:国循)脳血管内科・脳神経内科の豊田一則副院長らの研究チームが、同科で入院治療を受けた脳梗塞連続症例の登録情報に基づいて、脳梗塞患者の件数やその重症度における季節差を明らかにしました。背景としては、国循は大阪府北部の豊能二次医療圏(人口100万人強)に位置し、豊能圏域地域リハビリテーション支援センターの2013-2015年の調査では圏内基幹7病院の脳卒中患者の38%を季節差なく入院治療しています(春39%、夏秋冬 各38%)。したがって、国循入院患者のみの研究とは言え、豊能圏に共通する脳梗塞季節差をある程度反映していると考えます。
脳梗塞入院件数の季節差――血管閉塞性トラブルは冬季に多い?
2011年から2015年までの5年間に国循で入院治療を受けた急性期脳梗塞患者2965例(中央値75歳、女性1170例)を対象としました。
冬(12~2月)、春(3~5月)、夏(6~8月)、秋(9~11月)に分けた場合の入院件数を、年齢(75歳超)、病型(心疾患に原因をもつ心原性脳塞栓症)、入院時重症度(NIH Stroke Scaleで10点以上に該当する中等症~重症例)の要因を用いて解析した結果を、図1に示します。
(図1)季節ごとの脳梗塞患者割合
脳梗塞患者全体では季節別発症率に目立った差はないが、高齢者・心原性脳塞栓症・重症例では比較的寒い季節の発症が有意に多くなる。
全体でみると、秋に件数がやや少ない以外に季節差を認めません。
一方で、75歳超の患者、心原性脳塞栓症患者、中等症~重症の患者に限定して調べると、いずれも冬の割合が目立って高くなります。この一因として、心原性脳塞栓症の最大の原因である心房細動(不整脈)の新規発症が冬に多いこと、そして心原性脳塞栓症患者は 概して高齢で症状が重いことが、挙げられます。
脳梗塞重症度・転帰の季節差
図2に、入院時の重症度と 1年後の転帰を示します。
先ほども書いたように、冬に重症例が目立ちます。
年齢と性別で調整した後も、冬の脳梗塞患者は他の時期の脳梗塞患者に比べて、中等症~重症例が有意に多くなります(→部分)。1年後転帰は冬がやや不良ですが、統計学的に有意ではありません。死亡例の割合は、夏が秋に比べて高くなっています(→部分)。
(図2)入院時重症度と1年後転帰
心房細動の新規発症が冬に多く、また心原性脳塞栓症は重篤な例が多いことから、寒い季節の入院時重症度(NIH Stroke Scaleが10以上)が高い。
この研究成果から分かること
過去の報告では、脳梗塞の発症率について、寒い時期が多いとする報告や、反対に夏に多いとの報告も見られ、一定の見解は得られていません。これは研究ごとの民族の違い、調査方法の違いなどに因るところも大きいです。
国循、あるいはより広く考えて大阪北部においては、季節ごとの入院治療件数の違いは目立ちませんでしたが、高齢者の脳梗塞、重症な脳梗塞という見方をするとやや冬が優勢でした。
心房細動などの心臓病を原因とするタイプの脳梗塞は、他の全身血管病と同様に冬の病気と言えそうです。一方で脳動脈の動脈硬化が原因となるタイプの脳梗塞は、脱水などを契機とするので、暑い季節にも注意が必要です。
結局どの季節にも一定の割合で発症し、一年中注意を払うべき病気であることは、間違いありません。
脳梗塞を起こした時に重い後遺症を残さないためには、「脳梗塞かしら」と疑った時点ですぐに救急車を呼び、専門病院に受診する必要があります。そのためには、そもそも脳梗塞が起こったときにどのような症状が現れるかを、知っておく必要があります。
冬場の心筋梗塞、脳梗塞の予防方法
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