• 0465-64-1600

健康長寿サロン

加齢に伴う不整脈
失神、人工ペースメーカー植え込みなど

お題)

不整脈があると起きやすい病気についての説明を、とのリクエストがありました。

 

A. 失神とは?  

失神患者4,030人の統計から (from CMAJ : Canadian Medical Association journal = journal de l’Association medicale canadienne)

  • 失神の原因で一番多いのは血管迷走神経反射。起きても、横になって休めばすぐによくなる。極度に緊張したとき、注射や採血をされたときなどに気が遠くなって倒れる例が代表。血管迷走神経反射は誰にでも起こる一時的な反応で、病気ではない。体質によって繰り返す人もいる。
  • 一方、心臓の病気による失神は危険。不整脈、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症など。
  • 心臓の病気というと胸が痛くなるイメージがあるが、痛みがない心臓の病気もたくさんある。胸痛が多い心筋梗塞も同様。胸痛ではなく、不整脈のため失神する例はよくある。いきなり失神してしまうと、意識はないのだから、もはや痛みは感じない。
  • 失神した人に対して、特に治療が要らない血管迷走神経反射なのか、心臓の病気の治療をするべきなのかを見分けることは重要。これは年齢によらない。
  • 失神(意識消失発作)や意識障害の原因としては心臓疾患、脳血管疾患、低血圧、自律神経調節の異常、低血糖、呼吸器疾患など様々。疾患がなくても極端なストレス、脱水によって起こることがあり、20~30%は精査をおこなっても原因がはっきりしない。

 

B.ブレーキ系不整脈(遅い・止まる) 

★ ペースメーカ植え込みが必要になる可能性がある不整脈

  • 心臓の洞結節が正常に機能して心臓が、60~80回のポンプ活動を規則的に行っている状態を「正常洞調律」という。
  • この正常洞調律の範囲を超えて「常に」脈が遅くなる(1分間に50回以下)タイプの不整脈が「徐脈性不整脈」。徐脈性不整脈は、さらに以下の4つに分ける。

1.規則的で遅い脈となる「洞性徐脈」

2.一時的に洞結節から電気信号が発生しなくなる「洞停止」

3.洞結節で正常に電気信号が発生しているのに心房に伝わらない「洞房ブロック」

4.洞結節からの電気信号が心房までは伝わるが心室まで伝わらない「房室ブロック」

 

 

C.洞不全と言われたら? (国立循環器病研究センター病院 資料から)

  • 洞不全は”発電所”(洞結節)の異常によって、心臓の中で電気が作られなくなる病気。
  • そのような人では、頻脈が停止した時に心臓が止まりやすくなり、ふらつきや失神が起こる。一般に数秒以上心臓が停止するとふらつきが起こり、10秒以上停止すると意識がなくなって倒れる(アダム・ストークス発作)。
  • 洞不全症候群では、心臓が止まってそのまま死んでしまうことはまずないが、意識を失った時にけがをしたり、交通事故に遭ったりすることがあるので注意が肝心。また、脈の遅い状態が長く続くと、心臓の機能が低下して心不全になることがある。
  • 洞結節の機能は年齢と共に低下する。
  • この病気の原因ははっきりしないことが多く、洞結節や心房の老化現象が主要な原因ではないかといわれている。また降圧剤や強心剤などの薬剤でも洞不全が起こることは、知っておこう。
  • 脈が遅いために、失神やふらつきなどの症状が出現した場合は、ペースメーカーの植え込み手術が検討される。症状がなくても、4秒以上の心停止が見つかった場合はペースメーカー植え込みが検討される。
  • 一方、長年の肉体労働やトレーニングなどにより生理的に洞結節の機能が抑制されて、脈が遅くなっているような人(スポーツ心臓)には、ペースメーカー治療の必要はない。 薬剤によって一時的に洞不全が生じた人で、薬剤の中止によってその機能が回復しうる人もペースメーカーの植え込みは不要。

 

D.房室ブロックと言われたら? (国立循環器病研究センター病院 資料から)

  • 心房と心室の境界には電気の流れを調節して“変電所”の役目をする房室結節という組織がある。この機能が低下して、心房から心室の方へ電気が伝わらなくなるために脈が遅くなるのが房室ブロック。ブロックとは「(道を)ふさぐ」「(進行を)妨げる」という意味。
  • 心筋梗塞や心筋症のような病気に伴って2度~3度の房室ブロックが起こった場合は、洞不全症候群と同様に、脈が遅くなった時にふらつきや めまい、失神、心不全などが起こる。

 

E.アクセル系不整脈(速い・暴走)

  • 洞性頻脈:頻脈性不整脈の中でも「洞性頻脈」は、発熱、精神的緊張、アルコール摂取など心臓以外の体の調子を反映した機能的なものがほとんど。健康な人にもみられる。多くの場合治療の必要はないが、甲状腺機能亢進症や心不全によって起こるケースがある。
  • 期外収縮 (心房性・心室性):「期外収縮」は最も多く見られる不整脈。その約8割は無症状だが、症状がある場合は、胸部の不快感、不規則なめまいや動悸などを感じることがある。症状があっても、特に心臓に疾患のない人の期外収縮は治療不要。
  • 心房粗動・心房細動:「心房粗動」は心房内を電気信号が旋回する(リエントリー:短絡路があるという)頻脈性の不整脈。多くの場合心筋虚血、心筋症、心筋炎などの原因に伴って起こる。治療としては、薬物療法や、心筋の一部を熱で凝固させる手法(カテーテルアブレーション)が有効。

「心房細動」は心房内のあちらこちらの部分から電気刺激が発生し、それが心房内を旋回することで起こる不整脈。心房の筋肉がブルブルと振動するような状態となり、心房がきちんと収縮しなくなり、血液を心房から心室に送り出す機能が低下する。高齢者の患者は多い。

心房細動が長く続くと心臓内に大きな血の塊ができ、それが剥がれて飛ぶため、大きな脳梗塞ができやすい(心原性脳塞栓症)。

左図(脳のCT):発症から3時間では異常所見は不鮮明。

右図(脳のCT):24時間後では、脳梗塞巣は鮮明な低吸収(黒い部分)となる。

目次

ページトップへ戻る