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健康長寿サロン

夜間頻尿 受診の目安など

 夜間頻尿がみられるようになりました。そのため睡眠への影響も出てきました。

受診の目安なども含め、概説をお願いします

 

 

1. 夜間頻尿で、ます知っておきたいこと

1.夜間頻尿とは

  • 夜間に1回以上、排尿のために目が覚める状態をいいます。
  • 高齢者ほど多く、夜間覚醒2回以上で生活の質(睡眠・転倒リスク)に影響が出やすくなります。
  • 「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。しかし、1日の排尿回数は人によって様々ですので、一概に1日に何回以上の排尿回数が異常とはいえず、8回以下の排尿回数でも自分自身で排尿回数が多いと感じる場合には頻尿といえます。

 

2.まず知っておきたい視点(男女共通)

夜間頻尿の原因として最初に除外したいのが「尿路感染症」です。症状としては、排尿時の痛みや違和感、残尿感、尿の濁りやにおいの変化のほか、進行すると発熱がみられます。

こうした症状がある場合は、感染症の可能性があるため早めの受診が必要です。受診科は泌尿器科、内科のほか外科や婦人科でも対応してくれるはずです。

尿検査で尿路感染症が確認された場合は、膀胱炎として対応されます。症状が希薄な場合、基本的には抗菌剤は投与されず、水分摂取を増やすことで観察となります。

発熱がみられる場合は腎盂腎炎と病名が変わり、抗菌剤対応の適応になりますが、全身症状が強い場合は内服薬でなく注射(点滴)が用いられます。

 

さて夜間頻尿は「膀胱だけの問題」ではありません。つまり排尿器官以外の要因でも起こります。たとえば心不全や腎機能の変化、利尿作用のある薬の服用時間、夕方以降の水分・アルコール摂取、睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)です。

こうした背景があって夜間頻尿がみられるケースもあるため、自己判断せず医療機関で相談することが大切です。

心不全や薬剤の関与、水分摂取の問題がないようなら、いよいよ加齢に伴う排尿機能の変化が検討されることになります。

 

 

《主な原因の分類》

1.尿をためにくいために起こる

・ 過活動膀胱

  • 前立腺肥大症(男性)

2.夜に作られる尿が多いために起こる

・ 夜間多尿(加齢、心不全、内分泌異常など)

3.生活習慣のため起こる

・ 夕方以降の水分やアルコールが多い

  • 利尿薬の服用時間が不適切

 

 

2.男性の場合(感染症除外後)

① 前立腺肥大症

高齢男性で最も多い原因

前立腺が大きくなり、尿道を圧迫ことで起きます。夜間頻尿だけでなく、以下の症状がみられやすくなります。

  • 尿の勢いが弱くなった
  • 出始めに時間がかかる
  • 残尿感がある
  • 日中もトイレが近い

 

《主な症状》

残尿感(排尿後まだ尿が残っているような感覚)、頻尿(トイレが近い)、夜間頻尿(就寝から起床までにトイレに一度以上いく)、尿線途絶(尿が途切れる)、尿意切迫感(いきなりトイレに行きたくなり漏れそうになってしまう)、尿勢低下(尿が勢い良く出ない)、腹圧排尿(お腹に力を入れないと尿が出ない)

 

ポイント

頻度:50歳代くらいの男性で増え始め、55歳以上の人では2割、80歳では8割くらいの男性が前立腺肥大症といわれている。

前立腺肥大は、前立腺がんとは別の病気です。

  • 前立腺肥大症は前立腺の良性腫瘍です。一方、前立腺がんは前立腺の悪性腫瘍です。
  • 前立腺肥大症と前立腺がんでは、発生しやすい場所がやや異なる。

→ 前立腺肥大症は前立腺の内側の腫瘍なので排尿状態に影響しやすい。

→一方の前立腺がんは、前立腺の外側にできることが多いため排尿状態には影響が出やすい。

前立腺肥大症が進展することで前立腺がんになることはないとされますが、前立腺肥大と前立腺がんが共存することは、あり得ます。つまり前立腺がんが隠れていないかどうか、検査することが大切です。

 

問診)

症状をスコア(IPSSやQOLスコア)にして重症度を計ることで、可能性を推測します。

《IPSS(国際前立腺症状スコア)》

以下の質問の合計点で重症度が推定できる

1.この1か月間、排尿後に尿がまだ残っている感じがありますか?

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

2.この1か月間、排尿後2時間以内にもう一度行かねばならないことがありましたか?

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点、

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

3.この1か月間、排尿途中に尿が途切れることがありましたか?

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点、

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

4.この1か月間、排尿をがまんするのがつらいことがありましたか

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点、

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

5.この1か月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか?

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点、

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

6.この1か月の間に、尿をし始めるためにおなかに力を入れることがありましたか?

なし:0点、5回に1回未満:1点、2回に1回未満:2点、2回に1回位:3点、

2回に1回以上:4点、ほとんどいつも:5点

 

7.この1か月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きまし

たか?

なし:0点、1回:1点、2回:2点、3回:3点、4回:4点、5回以上:5点

 

評価)合計点による重症度の推測

  • 0-7点:軽症
  • 8-19点:中等症
  • 20-35点:重症

 

 

② 過活動膀胱(男性にも多い)→このあとの女性の場合で詳しく説明します。

膀胱が過敏になり、尿が少なくても強い尿意を感じます。また前立腺肥大と合併していることもよくあります。症状としては、急にトイレに行きたくなる、夜間に何度も起きる、尿が我慢しにくいなど、前立腺肥大の症状と共通しています。

 

 

 

3.女性の場合(感染症除外後)

① 過活動膀胱

高齢女性では最も頻度が高い病態

夜間頻尿+切迫感(急な尿意)がみられます。40歳以上に多く、日本には約1,000万人近い患者がいるといわれています。

《原因》

  • 出産や加齢により、膀胱や骨盤底が弱くなるため。
  • 溜まった尿の量を感知する膀胱のセンサーが過敏になるため。
  • 脳の中にある排尿を司る部分や自律神経の乱れがあるため。
  • 精神的ストレスによる場合もある。

 

▶ 特徴

  • 日中も頻尿がある
  • 一回の尿量は少なめ
  • 「冷え」「不安」「睡眠の浅さ」で悪化しやすい
  • 膀胱を制御する神経の異常によって、尿意が予期せず突然起こってしまうことを繰り返す状態

文字どおり「膀胱が活動し過ぎる」状態です。

膀胱内に尿がそれほど溜まっていない場合であっても、排尿の筋肉が頑張りすぎて、急に尿意をもよおしてしまうなどが、女性の頻尿の主な原因です。

 

《主な症状》

頻尿・夜間排尿ですが、詳しくは以下のとおりです。

尿意切迫感(尿意が予期せず突然起こり、トイレに駆け込む)、尿失禁(トイレに間に合わずに漏れる)、頻尿(尿が頻繁に出る)、夜間頻尿(寝ていても、尿意で何度も目が覚めてしまう)

 

問診)

過活動膀胱症状質問票(OABSS)などを使って、普段の症状について調べることで、可能性を推測します。

《過活動膀胱症状質問票(過活動膀胱の診療ガイドラインより)》

1.朝起きた時から寝るときまでに何回くらい排尿をしましたか?

0点:7回以上、1点:8-14回、2点:15回以上

 

  • 夜寝てから朝起きるまでに何回くらい尿をするために起きましたか?

0点:0回、1点:1回、2点:2回、3点:3回

 

3.急に尿がしたくなり我慢が難しいことがありましたか?

0点:なし、1点:週に1回より少ない、2点:週に1回以上、3点:1日1回くらい

4点:1日2-4回、5点:1日5回以上

 

4.急に尿がしたくなり我慢ができず尿を漏らすことがありましたか?

0点:なし、1点:週に1回より少ない、2点:週に1回以上、3点:1日1回くらい

4点:1日2-4回、5点:1日5回以上

 

評価)合計点による重症度の推測

  • 質問3.が2点以上 かつ合計点数が3点以上:過活動膀胱の可能性がある
  • 5点以下:軽症
  • 6-11点:中等症
  • 12点以上:重症

 

 

② 骨盤臓器脱(軽症でも影響)

  • 膀胱や子宮が下がることで排尿障害が起きることがあります。
  • 残尿感 → 頻尿につながることから、婦人科受診を進めます。

 

 

 

4.夜間多尿

男女共通にみられます。前立腺肥大でもなく、過活動膀胱でもない場合は「夜間多尿」の可能性があります。

《夜間多尿》

ヒント

昼はあまり出ないのに、夜だけ多い場合や、足のむくみがある場合は可能性があります。

 

夜間多尿

夜間多尿とは、夜のみ尿量が多くなることをいいます。夜間に作られる尿量が多い状態であり、膀胱が正常でも夜に排尿回数が増えてしまうケースといえます。

 

原因としては、水分の過剰摂取、ホルモンバランスの乱れ(抗利尿ホルモン低下)、高血圧症など何らかの病気、あるいは病気の治療薬によるものなどがあります。

排尿の回数が多い、1回の尿の量が多いなど多尿の症状が夜間のみみられる場合には夜間多尿の疑いがあるため、泌尿器科の受診を検討しましょう。

夜間多尿を診断するには、排尿日誌をつけて自身の排尿を記録することが大切です。

 

原因)

・水分の過剰摂取:脳梗塞や心筋梗塞予防、脱水改善などの目的で水分摂取を就寝前に行うことにより、夜間尿量が増加することがあります。

・抗利尿ホルモン(ADH)は、通常は日中に少なく夜間に多く分泌されます。このため、通常は日中のほうが尿量は多く、夜間には尿量は減少することが一般的です。

一方、高齢者では夜間にADHの分泌が低下することが知られており、これによって夜間の尿量が増加します。また、アルコール摂取はADHの分泌が抑えられ、夜間多尿をきたします。

・夜間の血圧低下が少ない高齢者や高血圧患者では、夜間尿量が増えることが知られています。

また、心不全患者や高齢者は下半身に体の水分がたまりやすく、むくみが生じることがあります。その状態で夜間に横になると、腎臓への血流量が増加するために尿量が増加します。

・薬剤性多尿:利尿剤を服用することで夜間多尿が生じることもあります。また抗コリン薬、クロルプロマジンなどを夜間服用しても、喉の乾きにより夜間の水分摂取量が増えやすいため夜間多尿につながることがあります。Ca拮抗剤もむくみの副作用があるため、夜間尿量の増加につながることがあります。

 

治療)

行動療法)排尿日誌を付けて、飲水と尿量の関連を把握し、日中を含めた1日を通しての多尿なのか、夜間多尿なのかを把握することが必要です。また夜間の過剰な飲水、アルコール、カフェインの摂取は避けましょう。

 

薬物療法)男性の夜間多尿に伴う夜間頻尿に対して、デスモプレシンが保険適用となっています。女性ではまだ有効性が確認されていません。デスモプレシンはADHホルモンと同じようなはたらきがあり、夜間の尿量を減少させる作用があります。日本では、1日1回寝る前にデスモプレシンを内服することで夜間多尿を改善します。

 

予防)

寝る前のアルコールやカフェインの摂取、水分の取りすぎは夜に尿量が多くなる原因となります。寝る前にお酒やコーヒーを飲むことは控え、適度な水分摂取を心がけるようにしましょう。

 

 

 

5.受診の目安

早期受診が必要な例は、以下の場合です。

夜間 2回以上 起きる、転倒しそう/実際に転んだ、急に始まった・急に悪化、日中も強い頻尿や尿意切迫がある、男性で尿の勢いが明らかに低下、急性を考える症状(感染除外後でも)、排尿後も強い残尿感、尿が出にくくなってきた、下腹部の張りなど。

 

 

🩺 受診の目安

次のような場合は、泌尿器科やかかりつけ医への相談をおすすめします。

✔ 夜間に2回以上トイレで起きる日が続く

一般的に、夜間1回程度は加齢とともによくある現象ですが、2回以上が続くと生活の質が低下しやすくなります。

✔ 日中の眠気や転倒が心配

睡眠不足は転倒リスクを高めるため、早めの対策が必要です。

✔ 尿の勢いが弱い、残尿感がある(特に男性)

前立腺肥大症の可能性があります。

✔ 急な尿意や我慢しにくさがある(特に女性)

過活動膀胱が疑われます。

✔ むくみ、息切れ、体重増加などがある

心臓や腎臓の病気が関係していることがあります。

 

 

ヒント

水分は減らしすぎないことが大切です。ただし、寝る直前のがぶ飲みは控えましょう。

夜のトイレは、体からの小さなサインです。「仕方ない」と我慢せず、転ぶ前に、眠れなくなる前に、相談してください。

検査は痛いものばかりではありませんし、お薬や生活の工夫だけで楽になる方もたくさんいます。

 

 

 

 

参考資料)

「尿が近い、尿の回数が多い ~頻尿~」(日本泌尿器学会)

など

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