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浜辺の診療室から

上司の方 その教え方じゃ、部下は辞めます
教育はOJTで、わかりやすく確実に

  • 働き方(労働衛生)

新入職員との接点が多かった頃の話です。

もう限界。仕事は続けられないといった声を聞かされたことが、

何度かありました。

上司や先輩からあれこれ言われて凹んだ、もうやる気がしない

という理由が多かったように思います。

しかし相談をうけるたび、同じことを感じました。

それしきのことで、どうして悩むのか。

なぜ友人や家族、同僚や上司にもっと相談しないのか――。

 

他人からすれば些細なことでも

本人にしてみれば大問題であることはわかります。

けれども、そ・れ・を・理・由・に・仕事ができないというのは、

ちょっと違うんじゃないか……と思えたのです。

 

 

その後、何年かが経ち、

人が凹む理由が多岐に渡っていることを知りました。

たとえば、職場教育がそうでした。

 

やってみせ 言って聞かせて させてみて

褒(ほ)めてやらねば 人は動かじ

という山本五十六さんのことばは有名ですが、

職場教育では、これを修正した方法がよく採られます。

やってみせ(こうやるんだよ、と目の前で自ら披露する)

言って聞かせて(ツボはココで、カクニンするのはコレなど)

させてみて(実際にやってもらう)

ふたたび言って聞かせて(ココが違っていたね、こうだったでしょ?)

させてみて(修正されたか確認する)

……(繰り返し)

褒(ほ)めてやらねば(完成に近づいたら、しっかり褒める)

 

 

けれども新人教育や中途採用者への教育で

この思想に基づいたOJTは、さほど行われていませんでした。

ある人はお手並み拝見とばかりに、いきなり「やってみせてよ」といわれ、

ある人は何度問うてみても「自分で考えて」と突き返されました。

「どうやるのかワカラナイ。かといって、いまさら訊けないし」

「わたしは単なる“便利屋さん”として使われているだけ」

「誰かの役に立っていると思えなくなった」

といったことばを最後にもらして、

新人や、中途採用者の何人かが職場を去っていきました。

就職氷河期と、それ以降に多かったでしょうか。

 

過労死や長期休暇に追い込まれた医師や看護師の事例をみると、

医療現場では依然としてOJTが軽視されているようです。

技量は盗むもの、いまさら教育などといわれてもなあ……

といった風潮が居座っているからでしょうか。

 

 

 

ところで山本五十六さんのやってみせ……には、

以下の文言が続きます。

話し合い 耳を傾け承認し 任せてやらねば 人は育たず。

やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず。

 

まだまだ不完全だと感じて

「だから、そこは違うんだって! 一度で覚えてよ」

「同じことを何度も言わせないで!」

と、つい口を開いて詰問調になる前に、

教える側はじっと見守る姿勢が大事であることを覚えておいてください。

寛容さと包容力がいっぱいある環境で、

人ははじめて育ち、やがて実っていくのです。

 

大事なことは、むかしから少しも変わっていない――

本当にそう思います。

目次

生をめぐる雑文

心療内科

働き方(労働衛生)

高齢者の終末期

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