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浜辺の診療室から

解決策より原因分析を

  • 介護・医療・福祉の現場から

あちらこちらでインフルエンザが流行っています。

先日も病院で死亡者が出たとの報道がありました。

医療施設に限らず、集団生活をしている場で感染者が出たときは、

感染経路がよく問題になります。

どういった経路で病原体が入り込んだのかを推測するのです。

事実を知るには、現場のプロットが有用です。

たとえば、最初に確認されたのは2階のP地区1名(入院者1)。

次が翌朝9時に1階のQ地区2名(入院者1、看護スタッフ1)。

翌々日の午後3時には、1階のR地区1名(事務スタッフ1)……みたいに。

虫メガネで地べたを這うような作業が欠かせないのです。

これをしない限り、感染経路は見えてこず、原因には辿りつけません。

その作業と並行して、感染者の“隔離”や、スタッフの出勤停止を進めていきます。

経路や原因が不明なら、拡散防止対策や解決策はすべて無意味です。

 

――じつをいうと、

プロット作業や適切な隔離作業は、多くの現場で、

意外なほど、うまくいってい・ま・せ・ん。

なぜだか、わかりますか?

平面図のプロットをせず、時系列に沿った三次元解析もせず、

一足飛びに結論を出そうとしているからです。

そうした場では、過去に蓄積された対応法を検索することなく、

「自前で対処する」クセが染みついています。

創意工夫や“守破離”は、あくまでも

基本を忠実にこなした「あと」でなければいけません。

別のクセとしては、こうにちがいないといった“思い込み”が

強い点もあるようです。

 

現場をみつめて、原因分析をきちんとしていけば、

対策や解決策がみえてくることが、よくあります。

有名な“なぜなぜ分析”は、その代表でしょう。

Aの原因をBと突きとめたら、Bの原因であるCを探す。

Cが決まったら、なぜCが起きたのかの原因Dを探す。

さらにDはなぜ起こったのかを解析して、原因Eを特定する――。

これが、なぜなぜ分析・5回法です。

製造業やすぐれた医療機関でこうした思考方法が進んでいる理由は、

不良品や、感染拡大・蔓延が致命的であることを知っているからです。

 

自らが感染症にならない努力には限界がありますが、

感染症の蔓延・拡散防止は、知恵と努力次第です。

人間を対象としているすべての職場のみなさま、

「時間がない」「人がいない」などといわないで、基本を守り、

問題としっかり向き合うようにしましょう。

目次

生をめぐる雑文

心療内科

働き方(労働衛生)

高齢者の終末期

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