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浜辺の診療室から

いわゆる“コロナうつ”について

  • 心療内科

コロナの時代になって、元気が出ない、気が滅入っているとの声をよく耳にするようになりました。症状は多彩で、不安やイライラがベースになっているようです。

不安が拭いきれないため不安神経症(不安障害)になるのではないかと心配し、手洗いやマスク交換ばかりしているので強迫神経症(強迫性障害)になっているのではといった意見もよく聞かれます。不安や、気が休まらない状態が長く続くと、心身がすっかり疲れてしまうこともあり、抑うつ気分や、うつ病が起きやすくなります。

最近はネット検索で自己診断する人も多く、便利な時代になりました。チェック項目に☑を入れて結果を見たら、ズバリ深刻なうつ状態だったという話はめずらしくありません。

抑うつ気分もうつ病も、日常生活に支障をきたすようになれば治療が必要になってきます。

 

 

医療関係者が陥った 重症の“コロナうつ”

新型コロナ感染症の全体像がほとんど見えていなかったとき、呼吸不全で搬送される人が集中治療室や専用病棟を占有した時期がありました。医師も看護師も高い緊張を強いられ、3交代制を敷きながら著しい疲労が蓄積していきました。病院職員の3割近くが抑うつ状態やうつ病にあるといった報告や、専用病床に勤務する医師たちが一斉に辞めていったとの報道もありました。

うつ病をひとことでいうと、心身とくに脳のエネルギーが著しく枯渇することで、意欲が著しく落ちた状態と表現できます。医療関係者にはのちに述べる燃え尽きが多いことを考えると、楽観視できない状態だったとみられます。過重労働への反省から改善策が取られたはずですが、新型コロナ感染症は波状攻撃的な動きをすることから、最前線に立つ医療関係者への目配りは、今後も必要でしょう。

 

 

軽症の“コロナうつ症候群” が重症化するプロセス

こうした例からもわかるように、“コロナうつ”と呼ばれる状態は、コロナのことが気になって気分が塞ぐ程度の状態から、コロナと真正面に向き合って心身ともに疲弊していく状態まで含まれます。

そもそも“コロナうつ”というのは、正式な診断名でなく俗称ですから、“いわゆるコロナうつ”とか、“コロナうつ症候群”といった呼称がよいでしょう。

 

感染が波状的変動を繰り返すなかで、不安やいらだちなど、さまざまな精神的不調を訴える人が増えています。このなかで、ホントウに病的になっていく人たちは、いくつかのプロセスを経て深刻化していきます。まずイライラや不平不満が高まったり、結果として集中力が欠けたり言葉遣いが荒くなるなど、態度に変化がみられる時期があります。

次に訪れるのは行動の変化です。仕事への意欲が低下したり、なげやりになったりします。

こうした時期が長くなると頭痛、不眠、食欲低下や胃腸の不具合など身体症状が出るようになります。この時期を放置しておくと、抑うつ状態になったり燃え尽きてしまったりすることがあります。

 

 

こころのバッテリー

心身が疲れ果てた状態とは、こころのバッテリーが放電を繰り返した結果、すっかり枯渇した状態といえます。こころのバッテリーは、安心できる環境と十分な睡眠によって充電され、イライラや不快な思い、睡眠不足により放電していきます。

ところで肩を揉んでもらうと気持ちよくなりますが、こうした心地よさにより充電が進みます。

一方、他人の方を揉むことで相手が気持ちよくなると、揉んでいる側のバッテリーはより充電されるといった効果があります。ヘルパー・セラピーという用語がありますが、被災地などでボランティア活動をすると、相手だけでなく自分自身の心身にも良い影響が残ることが知られています。

ただしこのボランティア活動も、身の入れ方によっては注意が必要です。

 

 

一部のボランティアにみられた こころの変化

災害時に被災地現場や避難所で継続的に支援活動を行う人にみられる心理的変化が知られています。まず災害直後に「英雄期」と呼ばれる時期があります。危険を顧みることなく勇気ある行動を取るため、気分は充実しています。そのあと1週間から半年ほどは「ハネムーン期」と呼ばれ、連帯感が増してハイな気分になっています。しかしハネムーン期から2か月~2年ほど経つと「幻滅期」が訪れ、怒りや失望に包まれるようになります。燃え尽きが問題になってくる時期です。最後は「再建期」と呼ばれ、落ち着きを取り戻していく期間です。

 

 

“コロナうつ” から身を守るためのヒント

普段感じたことのなかった不安やいらだち、精神的不調を感ずるようになったら、“コロナうつ”になりかけているかもしれないと疑ってください。身を守るポイントは、仕事面と休息面にあります。

 

《仕事面で気をつけたいこと》 4つの管理を実践してみてください

  • 勤務時間の枠内で仕事をする(時間の管理)
  • 便利屋になって、他人の仕事まで請け負わない(仕事の管理)
  • 自分の感情を封印してまで相手の感情に合わせない、また引きずられない(感情の管理)
  • 消耗するまで働くことをしない(身体の危機管理)

 

《休息面で気をつけたいこと》 4つの確保を身に着けてください

  • 一定の睡眠時間をキープして、就寝時刻を守る(体内時計の確保)
  • 休日には、したいことをする(自分の気持ちの確保)→寝ていたいなら寝る、外出したいならする
  • 同じ時代を生きている家族を思いやる(家族への思いやりの確保)
  • ヒトも自然界に生きる生命体だったことを思い出す(人工の世界から離れる時間の確保)

 

 

リモートワークが普及したことの功罪が、よく話題になります。詳細には触れませんが、どうも疲れる、よくわからないがズレていく感触があるといった意見が少なくありません。

コロナの時代ですから、気心の知れた仲間との飲み会もしづらくなりました。

そんなときは目線を上げて、自然界に目をやってみましょう。また創造的なことをしてみましょう。2時間ほど電車に揺られて郊外に出る、クルマやバイク(オートバイ、自転車)で山の空気を吸いに行く、絵を描いてみる、楽器をいじってみるといった時間を、だまされたと思って確保してみてください。デジタルの世界になっても、アナログの居場所があると自律神経は喜びます。

 

正しく恐れるようにと、よくいわれますが、正しく恐れるとは「なにもしない、行動範囲を縮小する」ことではありません。

知識を得たら、その知識をもとに「従来していたことを、こうしたスタイルに変えて行う」「この点だけは遵守する」といった攻めの行動を取る姿勢が、正しく恐れることです。

守勢に回ってばかりいると相手本位になるため、ペースが崩れていきます。気をつけましょう。

目次

生をめぐる雑文

新型コロナウイルス感染症

老いるということ

認知症

高齢者の終末期

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