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浜辺の診療室から

ときには立ち止まって
ズームアウトしてみませんか

  • 心療内科

さんまさんのご長寿グランプリという番組で

定番ともいえるコーナーに

若き日の自分へのビデオレターがあります。

意外な展開に、つい噴き出してしまうレターもあれば、

胸打たれてほろりとくるレターもありますね。

ところでメンタルトレーニングの研修にも、

ビデオレターと似たような問いかけがあります。

 

 7歳のあなたが悔しそうに泣いています。

 どんな声をかけますか?

 18歳のあなたは受験にすべて失敗しました。

 なんといって声をかけますか?

 30歳のあなたは、勤めていた会社が倒産しました。

 どういった声をかけてあげますか?

 

不安に包まれ、先が見えなくなったと思う瞬間は、

誰にでもあります。

でもそれを一つひとつ乗り越えてきたからこそ、

いまがあるのです。

乗り越えるには、

あるサジェッションが効いていたのではないでしょうか。

たとえば誰かのひとことだったり、

たまたま立ち寄った書店で目にした活字だったり、

自らが思い描いてきた強い信念だったり。

そうしたことを思い出してのひとことでも構いません。

いま現在のあなたから、

立ち往生しているかつてのあなたへひとこと、

あなたという人を一番よくわかっているあなたから

声をかけてやってくださいという設問です。

 

 ソンナニ心配シナクテイイ

 苦シイトイヘドモ、終ワラナイ旅ハナイ

 大丈夫、腐ラズ凹マズ正シク明ルク、モウ少シ……笑ッテミテ

 

といった回答が多かったように思います。

 

 

そうして今度は、現・在・の・あ・な・たに語りかけてくださいという設問になります。

あなたの立場は、熟年を通り越して老年の域にあります。

同級生はすでに、大半が亡くなっています。

100点満点ではないにせよ、

思っていた以上に、まずまずの人生が送れた気がするとあなたは思っています。

老いたあなたから、いま現在のあなたに声をかけてあげてください、というわけです。

 

 

 

久方ぶりに親族を看取りました。

家業の呉服屋さんから みかん農家に嫁ぎ、

子育てをしながら夫婦して法人設立という事業に挑んだ人生は、

いくつもの山や、谷があったと思います。

炉に収まり、火が回っていく通奏低音のような音を聞きながら、

いまのあなたは、若き日のあなたに どんな声をかけているのだろう……

そんなことを思いました。

 

コロナの時代になって、

経済や、ニッポンそのものの行く末が不透明になるなか、

うつむき、立ち往生する日々が増えていると感じます。

そんなときはドローン撮影のようにレンズをズーっと引いて、

しかも時間軸というレンズで あなた自身をズームアウトして、

ちょっと遠いところから俯瞰してみてください。

 

……なにか、……聞こえてきませんか?

遥かかなたのあちらこちらで、あなたと出会った人たちが、

今日もあなたを見守っていてくれています。

目次

生をめぐる雑文

新型コロナウイルス感染症

老いるということ

認知症

高齢者の終末期

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