急変の解釈
(救命現場から 第1回)
- 高齢者の終末期
ヒトにおける“急変”とは、どういうことでしょうか。つまらぬことのようですが、じつは、重要な意味があるように思えます。
辞書で「急変」を開くと、「状態が急に変わること」「急に起こった変事」と説明されています。なるほど……。
たとえば、晴れていた空がたちまち曇り、風が強まって、大粒の雨が降ってきたようなとき、天気が急変したと、わたしたちはいいます。
そうでなく、しとしと降っていた雨が本降りになって大粒の雨が落ちてきたとき、天気が急変したと、わたしたちはたぶんいわないでしょう。
こうしたことから、わたしたちが急変という用語を使うときは、無意識のうちの申し合わせ事項が、4つほどあるように思えます。
1.急変とは、状態が「悪くなる」ほうに向いたときに限られる。
2.悪くなる「前」の状態が、よければよいほど、急変度は大きい。
3.悪い状態が急に起きたといっても、悪い状態の「前」が、そこそこ悪ければ、急変とはいわない。
4.悪い状態が急に起きたといっても、「想定内」のことであれば、急変とはいわない。
そうであるなら、3.や4.にあるように急に変化を示す「前」の状態について、高齢者の終末期医療・看護・介護の場で、申し合わせておく必要があるような気がします。
急変の先にあるのが心肺停止です。