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浜辺の診療室から

それでも、がん がいいですか?

  • 生をめぐる雑文

50代前半の方から、ときどき手紙が届きます。

 がんがみつかったため市の基幹病院で手術を受け、

 そのあと抗がん剤治療を受けました。

 しかし便は出ず、尿も出ず、

 尿路感染症をくりかえすなど、

 あれやこれやもろもろ悪い状態のなか、

 自宅での生活がやっと可能になったと判断され、

 先日退院となりました。

しかし退院後も体調は思わしくないようです。

昨日はこんなメールでした――。

 

 がん細胞もたぶん

 もう全滅しているのではないかとの妄想を抱いています。

 こちらの体もかなりのダメージで、

 ふたたび髪が抜け始めたので、

 カツラの準備を急がなくてはと

 今さらながら、がんばっています。

 抗がん剤は一度でいいと思っていたけれど、

 周囲から許されない雰囲気があって、あきらめました。

 終わりのない旅をいつまで続ければいいのでしょう。

 体が治療に耐えられれば生き残り、

 ダメなときはすべていきなり、

 ジ・エンドではないかと思います。

 あたりまえなのでしょうけど……、

 不思議な気がします。

 

 

そのむかし、ノンフィクション作家で評論家でもある人が、

死ぬなら自分はがんがいいと語っていました。

残された時間で人生を総括できるからというのが理由でした。

家族とともに、家族との距離を縮めながら、

一瞬一瞬を精一杯生き抜くことができる理想的な最期。

いわば豊かな死が迎えられるというのです。

 

たしかにがん治療は進みました。

けれども家族と縁遠い人もいれば、

恐怖から逃れられない人もたくさんいます。

残された時間で人生を総括できるから、というけれど、

生きた時間がさほどない人は、どう総括すればいいのですか?

一点をじっとみつめながら生きている担がん患者たちのことを、

いま一度、考えていたいと思うのです。

目次

生をめぐる雑文

新型コロナウイルス感染症

老いるということ

認知症

高齢者の終末期

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